五ヶ瀬川(読み)ゴカセガワ

デジタル大辞泉 「五ヶ瀬川」の意味・読み・例文・類語

ごかせ‐がわ〔‐がは〕【五ヶ瀬川】

宮崎県北部を流れる五ヶ瀬川水系の本流。西臼杵にしうすき郡五ヶ瀬町の九州山地向坂むこうざか山(標高1684メートル)東斜面に源を発して北流し、途中東に向きを変えて延岡のべおか市で日向ひゅうが灘に注ぐ。長さ106キロ。上流部は一部に熊本県阿蘇あそ地方を含み、蘇陽そよう高千穂峡(宮崎県)などの深い峡谷を形成している。延岡市流域一帯の鮎梁あゆやなは秋の風物詩として知られる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本歴史地名大系 「五ヶ瀬川」の解説

五ヶ瀬川
ごかせがわ

県北最大の河川で一級河川。源流域の五ヶ瀬町鞍岡くらおか地区から河口の延岡港まで延長八六・三キロ、流域は支流域も含めると西臼杵郡全域、東臼杵郡北部の北川きたがわ町・北方きたかた町・北浦きたうら町、延岡市の全域に及ぶ。源流域は日本最南端の天然スキー場で有名になった向坂むこうさか(一六八四・四メートル)周辺の九州山地脊梁で、付近には石灰岩特有の植物群落をもつ白岩しらいわ(一六四六・四メートル)、九州最古の地層で知られる祇園ぎおん(一三〇七・一メートル)など一〇〇〇メートルを超える山々が峰を連ね、川は深い谷を刻んで流れる。谷底平野はなく、わずかに鞍岡地区の中心集落辺りが河岸に向けて緩傾斜となり小規模な平地となっている。支流は現在七二流あるが(河川・砂防等指定調書)、明治一九年(一八八六)の統計及内務報告(県庁文書)の同一六年調べの河川ノ脈絡には二五流があげられている。そのなかで今も当時の名称を保ち続けているのは跡取あととり川・秋元あきもと川・日向ひなた川・綱瀬つなのせ(綱ノ瀬)川・日影ひのかげ(日の影)川・曾木そき川・大瀬おおせ川・祝子ほうり川の八流で、いずれも一次支流である。

本流(幹川)は源流域から北流し、いったん熊本県蘇陽そよう馬見原まみはらに入り、県境をさらに北流して高千穂町に入る。蘇陽峡とよばれる県境域から高千穂峡を経て北方町に至る区間まで所によっては一〇〇メートル級の絶壁が続く。この峡谷は地質時代の第四紀更新世に阿蘇山の火砕流で埋められた谷を再度浸食して形成されたもので、谷壁をつくる岩石は溶結凝灰岩とよばれる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「五ヶ瀬川」の意味・わかりやすい解説

五ヶ瀬川 (ごかせがわ)

宮崎県北部を流れる川。熊本県境の九州山地の向坂山付近に源を発して北流したのち,南東に流れて延岡市で日向灘に注ぐ。幹川流路延長106km,全流域面積1820km2。ほぼ川に沿って高千穂線(2007~08年に全線廃止),国道218号線が走る。五ヶ瀬の名は,上流から高千穂町の吐ノ瀬(とのせ),窓ノ瀬,あららぎの瀬,日之影町の綱ノ瀬,延岡市の大瀬の五つの瀬をとったという。支流は南側の分水嶺がせまっているため右岸よりも左岸によく発達する。左岸のおもな支流は上流から岩戸川,日之影川,綱ノ瀬川,祝子(ほうり)川などで,九州山地の走向に沿い南西方向に平行して並ぶ。この河谷は,浸食の進んだ谷に阿蘇火山の高熱の火山灰が堆積して形成された溶結凝灰岩を川が再び浸食してできた地形が特色で,蘇陽峡,高千穂峡,岩戸峡などの深い峡谷に見られる赤色の柱を立てたような柱状節理の絶壁がその典型である。高千穂町一帯では本支流の峡谷の上部,標高300~400m付近に緩斜面が発達する。中でも中心集落の三田井は本流沿いにまとまって広がる緩斜面に立地し,四方にバス路線が通じる内陸交通の要地であり,1972年に開通した高千穂線の終点ともなっていた。この川の谷には同じ県内の耳川上流の椎葉や一ッ瀬川上流の米良の谷にあるような落人伝説は見られず,三田井,岩戸地区に日本の建国に関する神話,伝説があるのが特色である。地質,地形の関係で大きなダムは建設できないが,水力発電による電気は河口の延岡の化学工業などに利用されている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「五ヶ瀬川」の意味・わかりやすい解説

五ヶ瀬川【ごかせがわ】

宮崎県北部,九州山地の向坂山の東に発し,東流して日向(ひゅうが)灘に注ぐ川。長さ106km,流域面積1820km2。上流は阿蘇溶岩の台地を流れ蘇陽峡,高千穂峡などの峡谷をなす。中流から下流の河谷に国道218号線が通じ,河口の三角州に延岡市が発達する。
→関連項目北方[町]五ヶ瀬[町]蘇陽[町]高千穂[町]延岡[市]日之影[町]宮崎[県]

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「五ヶ瀬川」の意味・わかりやすい解説

五ヶ瀬川
ごかせがわ

宮崎県北部、五ヶ瀬町の九州山地に源を発し、東流して延岡市(のべおかし)で日向灘(ひゅうがなだ)に注ぐ川。一級河川。延長106キロメートル、流域面積1820平方キロメートル。上流部は熊本県を含み、蘇陽(そよう)峡や高千穂(たかちほ)峡などの深い峡谷をなす。いずれも阿蘇(あそ)火山の噴出した大量の溶結凝灰岩の台地を侵食してつくられた。上流域で、岩戸(いわと)川、日ノ影(ひのかげ)川、綱ノ瀬(つなのせ)川などの支流を集める。河口は北(きた)川、祝子(ほうり)川と合流して延岡平野の複合三角州をつくる。延岡市では、本流と南の大瀬(おおせ)川に分流して広い川中島がある。延岡市の旭化成(あさひかせい)化学工場群は、五ヶ瀬川水系の豊富な水と水力発電を立地条件とし、同水系最大出力7.2万キロワットのうち旭化成が4.2万キロワットを占めている。中流部はアユ簗漁(あゆやなりょう)が盛ん。なお、五ヶ瀬とは、上流から吐(と)ノ瀬・窓ノ瀬・あららぎノ瀬(高千穂町)、綱ノ瀬(日之影町)、大瀬(延岡市)の五つの瀬をとってつけた名という。

[横山淳一]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「五ヶ瀬川」の意味・わかりやすい解説

五ヶ瀬川
ごかせがわ

宮崎県北西部の九州山地に源を発し,ほぼ東流して延岡市日向灘に注ぐ川。全長 106km。上流部の古生層,中流部の中生層の浸食の進んだ谷に,阿蘇山溶結凝灰岩が堆積し,この溶岩層を川が再び浸食して深い峡谷をつくっている点が特徴的である。赤色をした柱状節理の美しい溶岩の絶壁の上には段丘状の平坦地があり,古くから道路や集落が開けた。上流域には高千穂峡のようなみごとな峡谷があり,天孫降臨伝説地がある。中流部ではアユの簗漁が行なわれる。延岡市の化学工場群は五ヶ瀬川の豊富な水を立地条件にしている。河谷に沿って国道218号線が通る。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報