散位(読み)サンイ

デジタル大辞泉 「散位」の意味・読み・例文・類語

さん‐い〔‐ヰ〕【散位】

連声れんじょうで「さんに」とも》
律令制で、位階だけで官職のないこと。また、その人。
散位寮」の略。

さん‐に〔‐ヰ〕【散位】

さんい」の連声れんじょう

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精選版 日本国語大辞典 「散位」の意味・読み・例文・類語

さん‐い ‥ヰ【散位】

〘名〙 (連声(れんじょう)で「さんに」とも)
令制において、位階だけがあって、官職のないこと。また、その人。また、三位以上であって、摂関、大臣、大・中納言、参議のどの職にもないものをさす場合もある。散官散班(さんぱん)
続日本紀‐霊亀二年(716)六月乙丑「以散位六位已下資家者」 〔春秋左伝注‐文公一二年〕
② 「さんいりょう(散位寮)」の略。〔令義解(718)〕

さん‐に ‥ヰ【散位】

〘名〙 (「さんい」の連声) ⇒さんい(散位)

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普及版 字通 「散位」の読み・字形・画数・意味

【散位】さんい(ゐ)

位のみで、職事のない者。〔宋書、周朗伝〕官には事立をし、人には官し、しく散位を樹て、く冗人をむること無(なか)らしむ。

字通「散」の項目を見る

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改訂新版 世界大百科事典 「散位」の意味・わかりやすい解説

散位 (さんい)

〈さんに〉ともいう。日本古代の律令制において,官職がなくて,位階のみを有するもの。五位以上の子孫蔭位(おんい)により位を有するが役職のないもの,致仕(ちし)・廃官・遭喪(父母の喪による解官)・患解(病気による解官)等により官職をはなれたもの,白丁出身で舎人(とねり)等の考により位をえたが官職のないもの,貢献等により位をえたものをさす。在京の五位以上は散位寮に,六位以下は分番で仕え,地方では国衙に仕えて雑使にあてられた。
散位寮
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「散位」の意味・わかりやすい解説

散位
さんい

令(りょう)制における官吏の称呼の一つ。「さんに」とも読む。文武官のうち、現任職務を有する職事(しきじ)に対し、位階だけあって官職についていない者をいう。散官、散事(女官)とも称する。散位は式部省の被管である散位寮に所属する。したがってその名簿は、この寮で保管することになっているが、のちには武散位のみは兵部(ひょうぶ)省に移管される。また散位のうち五位以上は長上(ちょうじょう)官で、この寮に毎日出勤するが、六位以下は番上(ばんじょう)で、1か月のうち15日間分番で出勤し、地方の外(げ)散位は国府に出仕する。その待遇については、五位以上は位田、位禄(いろく)などが支給されるが、六位以下にはこれがなく、また季禄も与えられない。

[渡辺直彦]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「散位」の解説

散位
さんに

「さんい」とも。律令制下,位階だけをもち官職についていない者のこと。職事官(しきじかん)や雑任の退職した者が中心だが,位子などの労を重ねて叙位される者,献物などの臨時の叙位による者もある。散位寮がその名帳・朝集にあたり,内外・文武の別がある。五位以上は散位寮に長上し,六位以下の在京者は散位寮,京外は国府に分番して考課をうけるが,繁忙な官司に随時配属されることもある。のちに定員が定められ,定員外の者は続労銭(しょくろうせん)を納めて考課をうけた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「散位」の意味・わかりやすい解説

散位
さんい

令制で,位階をもちながら官職についていない者の称呼。「さんに」とも読み,散官ともいう。もと散位寮,のち式部省の所管で,臨時の諸使,諸役のために出勤した。また,三位以上で摂関,大臣,大・中納言,参議のいずれにも就任していない者をいうこともある。

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旺文社日本史事典 三訂版 「散位」の解説

散位
さんい

律令制下,位階があるが職掌のない者をいう
職掌のある職事 (しきじ) と対比される。式部省の散位寮で管轄し,在京の六位以下の散位は交代で散位寮に出向し,地方は国衙 (こくが) に出仕して欠員のある場合に任用された。

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世界大百科事典(旧版)内の散位の言及

【散位】より

…五位以上の子孫で蔭位(おんい)により位を有するが役職のないもの,致仕(ちし)・廃官・遭喪(父母の喪による解官)・患解(病気による解官)等により官職をはなれたもの,白丁出身で舎人(とねり)等の考により位をえたが官職のないもの,貢献等により位をえたものをさす。在京の五位以上は散位寮に,六位以下は分番で仕え,地方では国衙に仕えて雑使にあてられた。散位寮【山田 英雄】。…

【番上】より

…すなわち,中央諸官庁,大宰府,諸国などの史生,中央の伴部,使部,官掌・省掌などの掌類,大舎人・東宮舎人・中宮舎人らの舎人(とねり),兵衛,および親王の公的従者である帳内(ちようない),貴族官僚の公的従者である資人などは,いずれも番上であり,また大宰府や諸国府に勤務した下級職員たちも番上であった。そして式部省に籍を置く散位六位以下は散位寮に番上し,地方諸国の外散位は国府に番上したのであり,国府に番上した下級職員たちとともに外分番ともよばれた。番上は一般に,年間に140日以上勤務すると毎年の評定対象にされたが,帳内・資人は200日以上の勤務が必要であった。…

※「散位」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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