日本の古代貴族に与えられた給与の一種。大宝・養老令の規定では四位と五位の官人に,その位階に応じた額の禄を与えることになっていた。もともと位によって支給される位封と同系列の給与制度で,令では一位から三位までが封戸,四位,五位が位禄を支給された(ただし慶雲3年以後は四位も封戸となる)。位禄に支給する品物は,絁(あしぎぬ),糸,綿(今日の真綿),布(麻布),庸布等で,いずれも調庸によって収取されたものから支給された。このように律令支配が貫徹し,調庸が個別人身支配にもとづいて収取されることを前提とした給与制度であったため,律令支配が動揺しはじめると,位禄の支給源も調庸の収取に依拠することができなくなった。そのために少なくとも10世紀には,国衙の管理する穀稲を財源に支給するようになり変質した。
→季禄 →封戸(ふこ)
執筆者:鬼頭 清明
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律令(りつりょう)官僚への給与の一種。大宝・養老禄令(ろくりょう)では、正一位(しょういちい)から従三位(じゅさんみ)までは位封(いふ)、四、五位には位禄を給する規定であり、正四位、従四位、正五位、従五位と等差をつけて、絁(あしぎぬ)、綿、布などを支給し、女性は半分に減じた。正当な理由がなくて欠勤2年に及ぶと、位封、位禄ともに、支給が停止された。さかのぼって689年(持統天皇3)6月施行の浄御原令(きよみはらりょう)では、位階制との構造的対比で五位以上にあたる直位(じきい)以上は、すべて位封の対象であった。大宝令(701)の施行後、705年(慶雲2)11月に、五位を位封から位禄に切り替えたが、翌年2月に四位への位封支給が決定されたので、実質は五位の官僚だけに位禄が支給されることになった。
[野村忠夫]
『高橋崇著『律令官人給与制の研究』(1970・吉川弘文館)』
律令制下の給与の一つ。四位・五位の者に位封(いふ)の代替として位階に応じて年1回支給された。禄令によれば,四位・五位には食封(じきふ)を支給せず,位禄として絁・綿・布・庸布を,正四位に10疋・10屯・50端・360常,従四位に8疋・8屯・43端・300常,正五位に6疋・6屯・36端・240常,従五位に4疋・4屯・29端・180常を支給することになっていた(女性は半額)。しかし食封を大夫(五位以上)に支給していた大宝令前の遺制のため,令条どおり実施できず,705年(慶雲2)11月には五位のみ食封を停め,701年(大宝元)格(きゃく)で令制より増額されていた位禄を支給することになった。翌年2月の詔で四位には位封を支給することになり,令の規定どおりの範囲と支給額が実施されたのは808年(大同3)であった。なお外五位の位禄は,728年(神亀5)3月6日の格で内位の半額とされた。
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…貴族階級とされるのは五位以上のものを指すと考えてよい。有位者は食封(じきふ),位禄,季禄,位田等を給されたが,食封は親王(800~300戸)と三位以上(300~100戸),位禄は四位・五位,位田(品田)は親王(80~40町)と五位以上(80~8町)を対象とした。季禄は春秋2季に,各人の官職の相当官位に応じて支給されるもので,六位以下の官人もその対象となった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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