職事(読み)しきじ

精選版 日本国語大辞典の解説

しき‐じ【職事】

〘名〙
① 職務。職掌。仕事。
※令義解(718)考課「職事修理。昇降必当。為次官以上之最
② 令制で、有位者で管掌する職務のあること。また、その官職。また、その人。職事官。
※続日本紀‐文武二年(698)二月癸卯「賜百官職事已上及才伎長上祿、各有差」
③ 令制で、後宮十二司の女官(宮人)のうち、掌(しょう)(三等官)以上の者。
※令義解(718)後宮職員「右諸司掌以上、皆為職事、自余為散事
④ 蔵人所の頭(とう)、および五位・六位の蔵人の総称。
※大鏡(12C前)三「この御方へ職事めしてぞまゐるべきよしの宣旨くださせたまひける」
⑤ 平安時代以降、親王・女院・摂関家などの家政職員。家司の下位にある。特にそれら諸家の蔵人所・侍所の職員をいうことが多い。
※落窪(10C後)三「衛門督の殿の家司、しきじどもなり」
⑥ 宮中で行事があるとき、その日の事務を担当し、執行する役。多くは蔵人がその任にあたった。
※玉葉‐承安二年(1172)五月二八日「上卿直仰下之、〈略〉仍不待仰欲下知之間、職事遮仰之」
⑦ 諸種の組織にあって、実務を担当する者。実際の仕事を行なう者。
※申楽談儀(1430)附載「又、次の造り物をば、しきじ取るべし」

しょく‐じ【職事】

〘名〙
① 職として従事すること。また、その仕事。
※諸人日用宝(1737)上「士農工商、或は売買、或は己が職事(ショクジ)、或は耕作、或は主人に仕るにつゐて、只善心を用て作んと励み」 〔春秋左伝‐定公四年〕

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

職事
しきじ

(1)大宝令(たいほうりょう)・養老(ようろう)令において、官位令に官位相当が定められている官職に任じている者を職事官という。位階をもつが官職には任じていない散官(散位)に対する概念。職事の主体は内外諸司の主典(さかん)以上であるが、別勅・才伎(さいぎ)の長上(ちょうじょう)も職事官と同じ待遇を受ける場合がある。また女官の場合、後宮諸官司の掌(しょう)以上を職事という。(2)平安時代以降、蔵人頭(くろうどのとう)および五位・六位の蔵人を職事と称し、彼らが宮中の儀式において事務を執り行う場合、これを「奉行(ぶぎょう)の職事」といった。(3)また親王家・摂関家などに置かれた蔵人所にも、別当の下に職事があり、(4)荘園(しょうえん)制のもとでの荘官の一種としても職事(職仕・職士)がある。

[吉岡眞之]

『和田英松・所功校訂『新訂官職要解』(講談社学術文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

職事
しきじ

(1) 令制では,務を定めてある,またはその官についている人をいう。 (2) 令外官である蔵人 (くろうど) の別称蔵人頭以下,五位,六位蔵人をさしていう。また摂関大臣家などにも朝廷の職事にならってこれをおいた。

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世界大百科事典 第2版の解説

しきじ【職事】

日本古代の律令官制にかかわる用語。令条では二つの用法がある。第1の用法は,〈職事修理(しきじおさまりおさまる)〉〈職事粗理(しきじあらあらおさまる)〉などと用いられ,一定の執掌・職務内容をさす。第2の用法は,その一定の執掌をもつ官,またはその官に就任している人をさし,中央諸官庁および大宰府・諸国司などの主要な官人たちである四等官(しとうかん)・品官(ほんかん)をいう。職事官ともよばれ,官位相当規定の対象である。

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世界大百科事典内の職事の言及

【後宮】より

…また律令支配機構に参加した女性を宮人(くうにん)と総称したが,中心は十二女司に勤務する女性らで,諸司が名に負う職掌で天皇に奉仕したが,天皇の家政機関的な性格が濃く,官位相当規定はない。諸司の掌(しよう)以上が〈職事〉,以下の女孺(によじゆ),采女(うねめ)らを〈散事〉とよぶが,男性官人に準ずる給禄の准位規定(表)があり,蔵司の筆頭である尚蔵以下の地歩が推定できる。そこでは蔵司を最高に,膳・縫司がこれに次ぎ,天皇に常侍して奏請・宣伝する内侍司(ないしのつかさ)は,その次に位置したが,しだいに内侍司の地歩が上昇し,蔵司と肩を並べるに至った。…

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