アスクレピアデス(読み)あすくれぴあです(英語表記)Asklēpiadēs

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アスクレピアデス」の意味・わかりやすい解説

アスクレピアデス(医師)
あすくれぴあです
Asklēpiadēs
(前124ころ―前40ころ)

古代ギリシアの医師。ギリシアのプルザに生まれ、アレクサンドリア医学を、アテネ修辞学を修め、同地で医業を開いた。紀元前91年にローマへきたといわれる。彼はエラシストラトスの医学説の影響を受けて固体病理学説を主張し、ヒポクラテス液体病理学説に反対した。彼の医学論はいわば原子説に基づくもので、原子は人の体内では互いに組み合わされ、微細な孔(あな)をもった、密な、あるいは粗な組織を構成し、その孔からは絶えず原子が出入りするものであると考えた。したがって、病気を治療するには原子の運動を正常化することに主眼が置かれ、物理的、食餌(しょくじ)的治療法が好んで用いられた。アスクレピアデスの「確実に、早く、愉快に」とする治療の原則は当時のローマ人に歓迎されたという。

[大鳥蘭三郎]


アスクレピアデス(詩人)
あすくれぴあです
Asklēpiadēs

生没年不詳。古代ギリシアの詩人サモス島出身で、紀元前290年ごろに活躍した。アレクサンドリア時代を代表するエピグラム詩人で、とくに恋愛詩に叙情的な情緒をふんだんに取り入れ、愛の神エロスが矢を射るというような新しいイメージやモチーフを導入した。純粋で率直な感情が簡素なことばと洗練された形式にあふれ、後世の恋愛詩に影響を与えた。作品は40編ほどが『パラティン詞華集』に収録されている。

[伊藤照夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アスクレピアデス」の意味・わかりやすい解説

アスクレピアデス
Asklēpiadēs; Asclepiades of Bithynia

[生]前124
[没]?
ギリシアの医者。アレクサンドリアに開業したが,のちにギリシア医学をローマに移した (前 91) 。その医学はガレノスの時代までローマで盛んに行われた。ヒポクラテスの体液病理説に反対で,投薬を好まず,マッサージ,水浴療法を重視した。病気を急性と慢性とに区別し,緊張とけいれんを分け,気管切開の創始者といわれる。また,精神障害者に対する人道的取扱いの先駆者ともいわれる。

アスクレピアデス
Asklēpiadēs

前 270年頃在世のギリシアの詩人。ヘレニズム時代の代表的エピグラム詩人の一人。学殖と繊細な感受性を特色とする。『ギリシア詞華集』に約 40編の詩が収められている。

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世界大百科事典(旧版)内のアスクレピアデスの言及

【体質】より

…前5世紀半ばに生まれたヒッポクラテスや2世紀のガレノスは,体質を構成する因子は体液であると考え,体液の混和の乱れが病気の原因とする液体病理学説を唱えていた。それに対してアスクレピアデスAsklēpiadēs(前124‐前60)らは,人体はアトムからなり,アトムの異常によって発病するという固体病理学説を唱えていた。いずれも,臓器,組織,細胞という知識がなく,個人の特徴を全体的に分類しようとしていた。…

※「アスクレピアデス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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