アッジェ(読み)あっじぇ(英語表記)Jean Eugène August Atget

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アッジェ」の意味・わかりやすい解説

アッジェ
あっじぇ
Jean Eugène August Atget
(1857―1927)

フランスの写真家。ジロンド県リーブルヌに生まれる。少年時代に郷里を離れパリに出て、船乗り役者などの職業を遍歴するが、1890年代に画家や文学者、舞台美術家などのために資料として写真を売る写真師を始めた。写真の買い手にはブラックやユトリロらの画家も含まれていたという。しかし、アッジェ自身は当時の写真界とはほとんど交渉がなく、ひたすら資料のためにパリの街角を撮っていたので、写真家としてはまったく無名であった。死の前年に、マン・レイによりシュルレアリスム機関誌に紹介され、ようやくその名が知られるようになった。今日では不思議な気配の漂う彼の作風が、幅広い層の人気を集めている。

[平木 収]

『ウージェーヌ・アッジェ写真集『パリのアッジェ』(1979・朝日新聞社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アッジェ」の意味・わかりやすい解説

アッジェ
Atget, (Jean-) Eugène (-Auguste)

[生]1857.2.12. リブルヌ
[没]1927.8.4. パリ
フランスの写真家。少年時代孤児となり伯父に育てられる。やがて下級船員となったが,まもなく役者を志して地方巡業一座に加わった。しかし 40歳頃画家に転じようとし,次いで写真家となる。パリ周辺の古い街並を数千枚も撮影した。しかし 1926年,M.レイに見出されて彼らの機関誌に表紙写真のほか数点紹介されたのが,生前発表された唯一のもので,孤独と貧窮のうちに没した。彼の写真の徹底した客観的記録主義は事物現実本質に迫り,かえって超現実的なイメージに到達することとなった点でも,写真のリアリズムに大きな影響を与えた。

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