日本大百科全書(ニッポニカ) 「アビラ」の意味・わかりやすい解説
アビラ
あびら
Ávila
スペイン中央部、カスティーリャ・イ・レオン地方にあるアビラ県の県都。人口4万9712(2001)。ドゥエロ川(ドーロ川)支流アダハ川の東岸、グアダラマ山脈北側の丘陵上、標高1131メートルに位置する高地の都市。県都としては最高所にある。旧カスティーリャ盆地にあるサラマンカなどと比較して冬の気候は厳しく、過去(1931~1960)最低気温は零下20.4℃である。しかし夏は清流と高度のおかげでしのぎやすい。毛織物工業がある。
ローマ時代はアベラAvelaと称し、8~10世紀にはムーア人の支配を受けたが、1090年からはキリスト教徒が奪回し、国土回復戦争(レコンキスタ)の重要な拠点となった。16世紀にとくに栄えたが、1607~1610年、フェリペ3世がムーア人を祖先とする市民の追放を行って以来、衰退し始めた。中世の姿をとどめる古い市街地には花崗岩(かこうがん)をそのまま用いた建物が多く、88の塔を備えた11世紀の城壁で囲まれている。城壁外にあるスペイン有数のロマネスク建築のサン・ビンセント教会をはじめ、サン・サルバドル大寺院、13世紀からルネサンスに至る彫刻を備えた宮殿など、歴史的建築物が多くみられる。また、聖女テレサ・デ・ヘススの生地として訪れる巡礼者も多く、スペインにおける宗教の中心地であるとともに、観光地ともなっている。旧市街と城壁外の教会は1985年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[田辺 裕・滝沢由美子]