いて座(読み)いてざ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「いて座」の意味・わかりやすい解説

いて座
いてざ / 射手座

夏の宵、南天に見られる星座。黄道十二星座の一つで人馬宮。ギリシア神話では半人半馬のケンタウロスの一人ケイロンが矢をつがえた姿とされている。目をひくのはζ(ゼータ)星からμ(ミュー)星までの6個の星が柄杓(ひしゃく)を伏せた形に並んでいる部分で、中国ではこれを斗宿(としゅく)とよび、北斗七星に対してこのほうを南斗六星(なんとろくせい)とよんでいた。ケイロンのつがえた矢の先のあたり2万8000光年のところに銀河系の中心があり、このため、いて座付近の天の川全天でももっとも明るく幅広く見えている。星雲、星団も多く、双眼鏡を向けると散光星雲のM8干潟(ひがた)星雲やM20三裂(さんれつ)星雲、散開星団のM23やM25、球状星団のM22などの姿を見つけだすことができる。

[藤井 旭]

『NHK取材班著『NHKサイエンススペシャル 銀河宇宙オデッセイ4 ET・宇宙人との交信 宇宙環境と生命』(1990・日本放送出版協会)』『えびなみつる著『はじめての星座案内――見ながら楽しむ星空の物語』(2001・誠文堂新光社)』『藤井旭著『春・夏星座図鑑――もっと知りたい春・夏の星座』(2002・偕成社)』


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改訂新版 世界大百科事典 「いて座」の意味・わかりやすい解説

いて(射手)座 (いてざ)
Sagittarius

略号Sgr。黄道星座の一つ。現在の冬至点はこの星座にある。ギリシア神話で半人半馬族ケンタウロス族に属する賢者ケイロンの姿をかたどり,弓に矢をつがえ,さそり座のアンタレスをねらう姿になる。星座の主体をなすのはひしゃく形に並ぶζ,τ,σ,φ,λ,μの6個の星で,中国では南斗六星と呼んでいた。α星ルクバト(アラビア語の射手のひざに由来)は,この星座のずっと南のほうにあり,明るさはわずか4.1等しかない。星座全体でいちばん明るい星はε星で1.8等,スペクトル型はB9である。天の川の色濃い部分に面し干潟星雲M8,オメガ星雲M17,三裂星雲M20などの星雲や星団が多い。また銀河系の中心はこの星座にあり,球状星団M22,M28,M55もこの星座に見られる。銀河の中心核は赤外観測や電波観測で研究されている。概略位置は赤経19h0m,赤緯-25°。午後8時の南中は9月上旬である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「いて座」の意味・わかりやすい解説

いて座
いてざ
Sagittarius

射手座。9月の初めの宵に南中する黄道星座。概略位置は赤経 19時,赤緯-25°。占星術では黄道十二宮の第9番目。星座の形は普通矢を放つケンタウロスを表すが,ウマに乗った射手としての姿が紀元前11世紀にバビロニア人により考えられた。いて座の西端,南斗六星の柄のあたりに冬至点がある。また太陽系から見た銀河系の中心はいて座の方向にあり,いて座Aと呼ばれる電波源がある。天の川の中にある星座なので星雲星団が多く,有名なものとしては三裂星雲(M20),干潟星雲(M8),オメガ星雲(M17)などがある。

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百科事典マイペディア 「いて座」の意味・わかりやすい解説

いて(射手)座【いてざ】

9月上旬の夕方,南の地平線近く見える星座。銀河系の中心方向に当たり,星団や星雲が多く存在する。黄道十二宮の第9宮。6個の星が描くひしゃく形を南斗六星という。ギリシア神話の半人半馬ケイロンが矢をつがえた姿という。

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