六訂版 家庭医学大全科 「イヌ回虫症」の解説
イヌ回虫症
イヌかいちゅうしょう
Toxocariasis
(感染症)
どんな感染症か
前項のイヌ
子イヌの便とともに外に出てきたイヌ回虫の卵は、適当な環境で数週間たつと感染可能になりますが、子イヌ以外の動物がこの卵を飲み込んでも、そのなかでは成熟できません。その代わり、筋肉のなかなどに幼虫のままとどまり、その筋肉を別の動物が食べるとそのなかでまた幼虫のままとどまり、ということを繰り返します。
成犬のなかでも、イヌ回虫は成熟できません。子イヌが成虫に感染しているのは、幼虫をもっている母犬が妊娠すると虫がいっせいに胎児に移動して、生後まもなく虫が腸管におりてきて成熟するからです。
ヒトは、この虫の卵を飲み込むと感染します。幼虫が寄生しているニワトリなどの肉を生で食べて感染することもあります。
症状の現れ方
自覚症状がまったくないことも多いのですが、虫が肺を通る時に
幼虫が眼に入ると、視力の低下、眼の痛み、眼の前を眼球の動きにつれてゴミが飛ぶような症状(
検査と診断
肺や肝臓の症状から、ただちにイヌ回虫症を疑うことはなく、血液検査で
眼の症状がある時は好酸球は高くなく、抗体もあまりつくられないため、眼科的に診断します。
治療の方法
虫が網膜内にいて出血などの症状があれば、眼科で
病気に気づいたらどうする
眼の症状が現れたら、すぐに眼科を受診してください。
日本では、直接この虫の卵を飲み込んだというよりは、牛や鶏の刺身や肝刺しなどで感染したと考えられるケースが多く、同じ物を食べている人は感染している可能性があります。同居の家族なども内科を受診して、血液検査をしておいたほうがよいでしょう。
丸山 治彦
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報