イワガニ(読み)いわがに(英語表記)lined shore crab

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イワガニ」の意味・わかりやすい解説

イワガニ
Pachygrapsus crassipes; rock crab

軟甲綱十脚目イワガニ科 Grapsidae。アブラガニとも呼ばれる。甲は幅 3.5cmほどの前方がやや開いた四角形で,黒色の地に側縁から内部に向かって多数の緑色の条線が走る。北海道南部から九州,大韓民国(韓国)の黄海沿岸までの岩礁海岸の満潮線付近にすみ,活発な動作でフナムシなどを捕食する。アメリカ合衆国太平洋岸のオレゴン州からカリフォルニア州にも多産する。潮間帯の岩の表面やサンゴ礁原には甲幅 5mmほどのヒメイワガニ P. minutus が多い。近年の研究によって,従来のイワガニ科 Grapsidaeは狭義のイワガニ科,モクズガニ科 Varunidae,ベンケイガニ科 Sesarmidae,ショウジンガニ科 Plagusiidae,ホウキガニ科 Xenograpsidaeに細分された。(→甲殻類十脚類節足動物軟甲類

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イワガニ」の意味・わかりやすい解説

イワガニ
いわがに / 岩蟹
lined shore crab
[学] Pachygrapsus crassipes

節足動物門甲殻綱十脚(じっきゃく)目イワガニ科に属するカニ。地方によってはアブラガニともよばれる。北海道南部から九州、朝鮮半島沿岸の岩礁にごく普通にみられるが、アメリカ合衆国太平洋岸のオレゴン州からカリフォルニア半島にかけても広く分布している。この分布状態は甲殻類の分布型としては特異で、どちらかが原産地で、人為的に他方に運ばれたものと考えられる。甲幅約4センチメートルで、前方にやや広い四角形。甲の側縁から内方に斜めに走る条(すじ)が多数あり、眼窩(がんか)外歯の後方に深い切れ込みが一つある。額(がく)は幅が広くて板状。甲は緑褐色で、歩脚は暗褐色。岩の割れ目やくぼみに入り込んでいるが、干潮時には岩の表面を歩き回って餌(えさ)をあさる。藻類だけでなく、死んだ魚貝類なども食べ、またフナムシなども捕食する。かつては食用とした地方もあるが、近年では釣りの餌(えさ)として利用されることが多い。サンゴ礁原には甲幅5ミリメートルほどのヒメイワガニP. minutusが多い。

[武田正倫]


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