ウラン鉛法(読み)ウランナマリホウ(その他表記)uranium-lead method

デジタル大辞泉 「ウラン鉛法」の意味・読み・例文・類語

ウランなまり‐ほう〔‐ハフ〕【ウラン鉛法】

uranium-lead method放射年代測定の一。ウラン放射性同位体が、崩壊によって同位元素に変わることを利用する。ウラン238、ウラン235の半減期はそれぞれ約45億年、約7億年であるため、地球年齢相当の古い地質時代年代測定に用いられる。ウラン鉛年代測定法。U-Pb法。

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精選版 日本国語大辞典 「ウラン鉛法」の意味・読み・例文・類語

ウラン‐なまりほう‥なまりハフ【ウラン鉛法】

  1. 〘 名詞 〙 ウランの放射性同位元素が、放射崩壊によって鉛の同位元素に変わることを利用した地質年代測定法

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改訂新版 世界大百科事典 「ウラン鉛法」の意味・わかりやすい解説

ウラン・鉛法 (ウランなまりほう)
uranium-lead method

ウランおよびトリウムが放射崩壊して鉛の同位体になる性質を利用して岩石年代を決定する方法。数千万~数億年以前の年代測定に有効。238U,235U,232ThはRaなどの放射性元素を経てHeを放出しながら,それぞれ206Pb,207Pb,208Pbに崩壊する。崩壊定数はそれぞれλ238=1.55×10⁻10/年,λ235=9.85×10⁻10/年,λ232=4.95×10⁻10/年である。岩石中の238Uと岩石中で238Uから生じた鉛206Pbの量と岩石の年代tの間には206Pb238U(eλ238t-1)の関係があるので,206Pb238Uの量がわかれば年代を計算できる。235U,232Thにも同様な式が成り立つので,U,Thの崩壊では三つの時計が動いていることになる。岩石形成時に取り込まれる鉛同位体組成が正しく推定され,岩石形成後にU,PbそしてUの崩壊系列中の放射性物質の出入りがなかったならば,三つの年代は一致する。この条件が成立する時,データは206Pb/238Uと207Pb/235Uを軸とする平面上で(206Pb/238U)/(207Pb/235U)=(eλ238t-1)/(eλ235t-1)で定まるコンコーディア曲線上を動く。図で岩石形成直後,原点にあった点が20億年後にはA点に至る。この時岩石が変成を受けると,岩石中の鉱物はさまざまな割合で鉛を失い,データを表す点は線分AO上に並ぶ。さらに10億年たつと点はBC上に並ぶ。これから岩石形成と変成の年代がわかる。

 地球が作られた時のU/Pb比と鉛同位元素組成がわかれば,地球の平均的な鉛同位元素組成を年代の関数として計算できる。一方,方鉛鉱などの鉛鉱物はUを取り込まないので,鉱物中の鉛同位元素組成は鉱物形成時のまま保持される。したがって方鉛鉱が地球の平均的U/Pb比をもつ物質から分化したのなら形成年代を決定することができる。このようにして求めた年代を特に鉛-鉛年代という。

 同時に作られて同じ鉛同位元素組成をもつ岩石であってもU/Pb比が異なれば,時間とともに鉛同位元素組成は異なってくる。しかし206Pb/204Pbと207Pb/204Pbを軸とする平面上では,これらの岩石を示す点は常に一直線上にある。この直線の傾きから年代が求められる。種々の隕石を示す点は45億年を示す直線上に並び,地球の平均的鉛同位体組成を示すと考えられる海底泥土中の鉛を示す点もこの直線に乗った。隕石も地球も原始太陽系内で同時にできたとみられるので,地球の年齢も45億年と結論された。
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百科事典マイペディア 「ウラン鉛法」の意味・わかりやすい解説

ウラン・鉛法【ウランなまりほう】

ウランとその壊変生成物の鉛を用いる年代測定法238U-2(0/)6Pb,235U-2(0/)7Pbの2組の方法がある。岩石・鉱物の生成時(固化した時)の年代測定に用いられる。たとえば238Uは約44.7億年の半減期で2(0/)6Pbに壊変するので,生成された2(0/)6Pbの量が求められれば鉱物生成時から現在までの経過時間を計算できる。しかし測定試料には最初からいくらか2(0/)6Pbが含まれているため,壊変によって生成された2(0/)6Pbの量を直接求めることはできない。そこで一般には安定同位体である2(0/)4Pbとの同位体比を利用して,238U/2(0/)4Pbの異なる3個以上の試料の2(0/)6Pb/2(0/)4Pbを測定し,アイソクロンを作成することによって年代を決定する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウラン鉛法」の意味・わかりやすい解説

ウラン‐鉛法
うらんなまりほう

放射性元素の放射壊変を利用した絶対年代測定法の一つ。一般に放射性元素の親元素は、一定の割合で崩壊し娘(じょう)元素を生じる。したがって、親元素と娘元素の量比を測定することによって、その年代を知ることができる。ウラン‐鉛法の場合、ウラン(U)238から鉛(Pb)206の変化を利用する方法と、ウラン235から鉛207の変化を利用する方法とがある。前者の場合の半減期(最初にあった原子核数がちょうど半分に減るのに要する時間)は約45億年であり、後者の場合は約7億年であるから、古い地質時代の測定に適している。

[岩松 暉・村田明広]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウラン鉛法」の意味・わかりやすい解説

ウラン・鉛法
ウラン・なまりほう
uranium-lead method

U-Pb法ともいう。ウランが放射崩壊して鉛に変化するのを利用して岩石の絶対年代を決める方法の一つ。ウラン 238→鉛 206,ウラン 235→鉛 207はそれぞれ半減期 4.47×109 年,0.704×109 年で壊変するので,岩石が生成されたときの鉛 206,鉛 207がわかっていると,現在の鉛 206,鉛 207の量から岩石が生成されてから現在までの時間が測定できる。実際には 206Pb/204Pb ,207Pb/204Pb をはかるだけで年代が決められるので,鉛・鉛法ともいう。半減期が長いため,若い年代の試料については精度が悪く,1億年より古い年代を示す試料に対して使われる。

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