エゼキエル(読み)えぜきえる(英語表記)Ezekiel

翻訳|Ezekiel

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エゼキエル」の意味・わかりやすい解説

エゼキエル
えぜきえる
Ezekiel

生没年不詳。『旧約聖書』の預言者の一人。紀元前597年、新バビロニア王国によってユダヤ人の第1回捕囚とともにバビロンに移された。捕囚の第5年目に、捕らわれの同胞の指導にあたるため、彼は神の啓示を受けて預言者となった。前587年新バビロニア王国によってユダ王国の都エルサレムが破壊されるまで、彼はエルサレムとユダに対する審判の預言を語り続けた。しかしエルサレム陥落の報を受けると、失意の民を慰めるため、神の恵みと民族復興の預言を語り始めた。その際彼がとくに強調したことは、ユダヤ民族の将来はすべて各人の決断にかかっているということであった。もと祭司であった彼は神殿再建にも情熱をもっていた。

[木田献一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エゼキエル」の意味・わかりやすい解説

エゼキエル
Ezekiel

旧約聖書中バビロニア捕囚時代の預言者。ヘブライ語で「神が強める」の意。祭司ブジの子。前 597年にバビロン捕囚に送られたが,その5年目に神の召命を受け預言活動を始めたとされる。その活動は約 20年以上にわたったと考えられ,その間故国イスラエル運命をさまざまな比喩象徴をもって預言した。同時に神の慈悲としての古い契約に代る永遠の契約について語り,また内面的な回心の必要を明らかにしている。エゼキエルの豊かな想像力は,その多くの比喩的な表現にみられる。たとえばやがては生命を得,新しきイスラエルとなる乾いた骨の堆積した谷のことを幻想的に語っている (エゼキエル書 37章) 。また彼は神を敬うことの深い意義について,神の名の神聖さについて,熱心に教えを広めた。きわめて霊感に満ちた預言者であり,その思想は一貫してメシア預言であった。

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