自分が死んだときや、病気や老化によって意思を伝えられなくなったときに備え、伝えるべきことを書き留めておくノート。結末を意味するエンディングendingと、ノートnoteをあわせた和製英語である。遺言書がおもに財産配分を記し、法的拘束力をもつものの葬儀後に開封されることが多いのに対し、エンディングノートについては夫婦や親子などの間で生前に内容を確認しあったりするケースも多い。葬儀や埋葬の希望、連絡すべき知人のリスト、自分史、思い出、伝えたいメッセージなどや銀行口座、加入している保険のリストといった備忘録的な内容も書き残しておくノートである。
体裁や書式は自由であるが、専用のノートブックや書き方とノート部分がセットになった書籍も販売されている。また、独居老人の増加に伴い、自治体やNPOが希望者に無料配布するケースが増えている。大阪府堺(さかい)市では、「私の老い支度」というノートを配布している。自身の経歴や家系図などを書き込み、介護や看病、葬儀についての希望、延命治療や臓器提供、病名告知についての考え方などについては選択肢を設けた書き込みやすい形式を採用している。また、新潟県見附(みつけ)市が全世帯に「マイ・ライフ・ノート」と名づけたエンディングノートを配布したところ、家族の絆(きずな)が強まった、生きがいを再認識したなど好意的な反響があったという。さらに、ノートブック形式以外にも、財布にしまっておける簡易な救急カードタイプのもの、死後の希望を音声や動画による電子データとして登録できる有料サービスなども登場している。
エンディングノートが注目されるようになったのは、週刊誌の連載をきっかけに2009年(平成21)ごろから「終活」ということばが話題となり、その後、2011年に公開されたドキュメンタリー映画『エンディングノート』(砂田麻美(まみ)監督作品)で、若者世代へも幅広く伝わったことによる。この映画では、胃癌(いがん)告知を受けた余命半年の主人公(父親)が、家族や自分のために最後の記録をつづりながら終末を迎える姿が描かれた。
[編集部]
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