オケオ(読み)おけお(英語表記)Oc-éo

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オケオ」の意味・わかりやすい解説

オケオ
おけお
Oc-éo

ベトナム南部、メコン川デルタ地帯西部にある都市遺跡。タイランド湾に臨む港町ラチジャーRachgiaの北東25キロメートルに位置する。1944年、フランス極東学院のマルレL. Malleretの発掘調査によって、オケオはおよそ2世紀より6、7世紀ごろに栄えた扶南(ふなん)国の港市の跡と考えられている。遺跡の中央を運河が貫き、扶南の都と想定されるアンコール・ボレイAngkor Borey方面へ延びている。杭上(こうじょう)家屋の木柱のほかに、金細工、ガラス器、仏像およびその鋳型などの優れた工芸品が発見されている。なかでも、中国・漢の夔鳳(きほう)鏡、方格規矩(きく)四神鏡の破片、ブラフミー文字の印章荷札または護符の一種とみられる方形耳付き錫(すず)製小板、152年の紀年のあるローマ皇帝アントニウス・ピウスの像と銘のある金貨、南インドのアマラバティ様式およびガンダーラ様式の仏像、中国・南北朝の影響を示す青銅仏の出土は貴重である。これらの出土品は、オケオが当時、ローマや中国との交渉の一拠点であり、インド系移民ないし商人の活動の場であったことを物語っている。

[青柳洋治]

『岡崎敬著『民族文化と東西文化の交流――石寨山とオケオ遺跡』(『世界考古学大系8 南アジア』所収・1966・平凡社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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