改訂新版 世界大百科事典 「カエデチョウ」の意味・わかりやすい解説
カエデチョウ (楓鳥)
gray waxbill
black-rumped waxbill
Estrilda troglodytes
スズメ目カエデチョウ科の鳥。全長約10cm,スズメよりずっと小さい。雌雄同色。眼の前後とくちばしは紅赤色で,背面は灰褐色,下面は淡褐色。腰と尾は黒く,飛ぶときによく目だつ。サハラ砂漠の南縁に沿って,アフリカ大陸中央を横断するように,エチオピアからセネガルにかけて分布している。半砂漠地の低木林にすみ,農耕地のまわりのとげやぶのある場所も好む。一夫一妻で繁殖する。巣は草や低木の根もとに枯草の葉先を使って卵形の天井のついた巣をつくる。その巣の隣に屋根のついた部屋をつくる。一方の鳥が抱卵中,もう1羽はこの部屋で休んでいる。1腹3~6卵を産む。チッフィーと鳴き,チッチッチッと声を出し飛び立つ。繁殖期以外は大きな群れをつくる。じょうぶな種子食の鳥のため飼いやすく,飼鳥としてときどき輸入される。
カエデチョウ科Estrildidaeはアフリカから東南アジア,ニューギニア,オーストラリア,南太平洋の島々にまで分布していて,125種ほどが知られている。羽色の鮮やかなものが多く,赤色,緑色,青色,黄色,ふじ色などに彩られている。種子食に適したぶあついくちばしをもち,そのうえくちばしの色も目だつものが多い。多くの種が乾燥地のサバンナやステップにすんでいるが,森林にいるものもある。サバンナのものは大きな群れをつくり,ときには大群となる。そのほとんどはイネ科などの種子を食べ,しばしば農作物に害を与える。しかし森林のものは双子葉植物の種子も食べ,また中央アフリカの森林にすむムシクイキンパラParmoptila woodhouseiのようにアリその他の昆虫食のものもある。ほとんどは一夫一妻をかたく守り,天井のついた袋状の巣をつくる。産卵数は多く1腹10卵という例も少なくない。雛には消化しかけた種子を吐き出して与える。雛の口腔内には,種に特有の色のついた突起のあるのが特徴である。
執筆者:中村 登流
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報