かげろう(読み)カゲロウ

デジタル大辞泉の解説

かげろ・う〔かげろふ〕

[動ワ五(ハ四)]《名詞「かげろう(陽炎)」の動詞化》
姿などがちらちらする。ちらっと見える。
「敵意の外に、まだ認めなければならない或物が其所に―・った」〈漱石明暗
光がほのめく。ひらめく。 春》「ギヤマンの如く豪華に―・へる/茅舎
「松のたえまより、わづかに月の―・ひて見えけるを見て」〈山家集・下・詞書〉
日がかげる。陰になる。
「秋寒き夕日は峰に―・ひて岡の尾花に風すさぶなり」〈風雅秋上

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大辞林 第三版の解説

かげろう

( 動四 )
光がほのめく。ひらめく。ちらちらする。 「時雨ゆく雲間に弱き冬の日の-・ひあへず暮るる空かな/風雅
姿や幻がちらつく。 「ただ今の御姿、まぼろしに-・へば/保元 下・古活字本
陰になる。日がかげる。 「よられつる野もせの草の-・ひて/新古今

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

かげろう
かげろう

かげろうといわれる現象にはおよそ次の三つがあり、それぞれ陽炎遊糸、蜉蝣または蜻蛉の文字をあてている。
(1)陽炎 光と影が微妙なたゆたいをみせる大気中の光学的現象。たとえば春先など、日当りのよい海岸の砂や屋根瓦(がわら)の上で、空気が暖められて密度分布にむらができるため、そこを通過する光が不規則に屈折させられてこの現象が現れる。たき火を通して遠方のものを見ると揺らいで見えるが、これも陽炎の一種である。水槽に水を張り下方から熱すると、湯の中に不規則な密度差を生じ、この湯を通して反対側を見ると、かげろうのように揺らいで見える。
(2)遊糸 クモが銀色の糸をなびかせながら飛んでいく現象。英語ではgossamerという。日本ではこの遊糸が雪の降る前後に見られるところから「雪迎え」「雪送り」とよぶ地方がある。中国では、遊糸はすべてクモが糸をなびかせて飛んでいく現象をさすが、この用例は5世紀以来多い。日本語では、陽炎の異名としても遊糸が用いられるが、春の季語としては「野馬(やば)」「糸遊(いとゆう)」「遊糸(ゆうし)」「かげろい」などが用いられる。
(3)蜉蝣・蜻蛉 トンボの古名であるが、飛ぶさまが「かげろう」のようにひらめくところからこのようにいわれる。はかなきものの象徴として用いられ、『徒然草(つれづれぐさ)』に「かげろふの夕を待ち、夏の蝉(せみ)の春秋をしらぬもあるぞかし」とある。[根本順吉]

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精選版 日本国語大辞典の解説

かげろ・う かげろふ

〘自ハ四〙 (名詞「かげろう(陽)」の動詞化したもの。平安末期から用いられた)
① 光がほのめく。ひらめく。光線がちらちらする。
※金葉(1124‐27)雑下・六三三「いつをいつと思ひ撓みて陽炎のかげろふ程の世をすぐすらん〈懐尋〉」
※俳諧・炭俵(1694)下「とうきびにかげろふ軒や玉まつり〈洒堂〉」
② 姿や幻などが、ちらつく。
※発心集(1216頃か)八「ほのかげにかげろふ物あり。〈略〉盗人なるべし、ここかしこにありきて」
③ 光が隠れて、陰になる。かげる。
※新古今(1205)夏・二六三「よられつる野もせの草のかげろひて涼しくくもる夕立の空〈西行〉」

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