がんの予防(読み)がんのよぼう

家庭医学館 「がんの予防」の解説

がんのよぼう【がんの予防】

禁煙や食生活の改善を
 近年の研究により、からだの細胞の中にあるがん遺伝子(いでんし)やがん抑制遺伝子に傷がつくと、細胞ががん化し、増殖(ぞうしょく)していくことがわかってきました。このようながんを発生させる環境要因の約3分の2は食品とたばこで、そのほか、ウイルス感染、放射線、大気汚染特定の感染症や職業(たとえばアスベストを扱う人に肺がんが多い)などとされています。
●禁煙はがん予防の第一歩
 食品やたばこなどには、イニシエーター(がんを発生させる起因物質(きいんぶっしつ))とプロモーター(がんを発育させる促進物質(そくしんぶっしつ))が含まれていて、この2つの段階発がん物質が作用して、細胞はがん化するといわれます。
 たばこの煙(けむり)には両方が含まれるうえ、数十種類の発がん物質が入っていて、がん発生の確率は非常に高くなります。
 非喫煙者(ひきつえんしゃ)に比べ、1日30本吸う人のがんになる危険度は、肺がんで約6.8倍、喉頭(こうとう)がんで約48倍という調査報告もあります。その他、ほとんどの部位でがんが発生しやすくなります。
 喫煙開始年齢が早いほどがんになりやすく、また、喫煙者の周囲の人も受動的に煙(副流煙(ふくりゅうえん))を吸わされていると、がんになるリスクが高くなります。禁煙はがん予防の第一歩なのです。
●食生活を改善する
 食品に含まれる成分のなかには、がん化を促す物質や抑える物質がいろいろあることがわかっています。偏(かたよ)らず、品数を多くして、バランスのとれた食事をとることが、がん予防には望ましいといわれます。
 控えたい食品 塩分濃度の高い食品を多く食べる地域の人には胃がんが多いといわれます。塩漬(しおづ)けなどの摂取を減らすことが胃がんの予防に重要です。また、動物性脂肪のとりすぎは大腸(だいちょう)がんや乳がんなどの発生を促し、多量の飲酒も肝がん、大腸がん前立腺(ぜんりつせん)がんなどのリスクを高めるといわれます。
 摂取したい食品 とくに、ビタミンCやEなどを豊富に含む緑黄色野菜や果物緑茶などは、胃がん、大腸がん、肺がん、子宮がんなど、多くの部位のがんに対して予防効果があり、食物繊維(しょくもつせんい)を多く含む食品は、大腸がんの予防に効果があるとされます。
●がん予防の12か条
 国立がんセンターでは、日常生活で実行するとがん予防に効果が期待できることとして、つぎのような「がんを防ぐための12か条」を提唱しています。
①バランスのとれた栄養をとる。
②毎日、変化のある食生活を心がける。
③食べすぎを避け、脂肪は控えめに。
④お酒はほどほどに飲む。
⑤たばこは吸わないようにする。
⑥食べ物から、適量のビタミンと繊維質のものを多くとる。
⑦塩辛いものは少なめに、熱いものは冷ましてから食べる。
⑧こげた部分は避ける。
⑨かびの生えたものに注意する。
⑩日光に当たりすぎない。
⑪適度にスポーツをする。
⑫からだを清潔に保つ。
●がんの一次予防と二次予防
 がんの発生要因となる物質になるべく触れず、発がんを抑制する食品を積極的にとるようにして、がんの発生を防ぐことを一次予防といいます。
 これに対して、がん検診などで早期にがんを発見し、早期治療を行なって、がんで死亡するのを防ぐのが二次予防です。
 がんの診断技術の進歩によって早期がんの発見率は高くなっています。定期的に検診を受け、がんが進行しないうちに治すことがたいせつです。
 また、将来に期待されるがん予防の手段としては、遺伝子診断(いでんししんだん)があります(コラム「がんの遺伝子診断」)。すでに特定のがんになりやすい体質をもつ、いわゆるがん家系では、がん遺伝子を調べることにより、健康な段階でがんの発生を予知できるようになっていますし、スクリーニング(ふるい分け)検査(がんを見つける検査の「早期発見をめざすがん検診」のがん検診のスクリーニング検査)の段階でも、重点的に検査することで早期にがんを発見して、早めに予防対策をとることが可能になりつつあります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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