キジバト(その他表記)Streptopelia orientalis; oriental turtle dove

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キジバト」の意味・わかりやすい解説

キジバト
Streptopelia orientalis; oriental turtle dove

ハト目ハト科ヤマバトともいう。全長 33~35cm。頭部から胸腹部にかけては淡いぶどう色を帯びた灰褐色。頸の側部には黒色と灰青色の横縞模様の斑がある。背は黒褐色で,赤褐色のよく目立つ鱗状斑がある。初列風切は黒色。尾は基部が青灰色で,後部に太い黒色の横帯があり,先端部は灰白色である。脚は赤紫色。中央アジアから東はシベリア南部サハリン島,日本,南はインドからインドシナ半島北部,中国にかけての一帯に広く分布する。日本では北海道から南西諸島までの各地で繁殖し,民家の庭,公園,農耕地から低山の林などに生息する。アジア大陸北部や北海道,東北地方北部では夏鳥(→渡り鳥)で,繁殖を終えると南下する。本州南部など留鳥として生息する地域では繁殖するつがいが一年中見られる。特徴のある声で「ででーぽーぽー」と聞こえる声で鳴く。

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改訂新版 世界大百科事典 「キジバト」の意味・わかりやすい解説

キジバト (雉鳩)
rufous turtle dove
Streptopelia orientalis

ハト目ハト科の鳥。全長約33cm。全体にぶどう色を帯びた薄い褐色をしていて,上面には赤みのある褐色のうろこ模様がある。翼は暗褐色。首の両側に濃い青色と白色の縞模様があるのが特徴。くちばしは黒っぽく,脚は暗赤色。ウラルおよびパミール以東のアジア大陸に広く分布している。日本では北海道から沖縄の先島諸島まで分布しており,ヒヨドリとともに日本でもっとも分布の広い鳥の一つ。北日本のものは冬季は南へ移動する。山地から平地までの林,人里,さらに市街地にも多くすんでいる。樹上に粗雑な皿型の巣を小枝でつくる。都市部では人家の庭木街路樹に巣をかけるものが多い。卵は白色無斑で,1腹の卵数はほとんどつねに2個。繁殖期は2~11月と長く,年3回の繁殖を行うものも少なくない。パッパッパッとはばたいて上空へ上がり,翼を開いて滑空して下りてくる飛び方は,繁殖期の求愛ディスプレーの一つとしてよく見ることができる。デデーポーポーと太い低い声でよく鳴く。昔からヤマバトの名で親しまれてきた。果実,種子などを好んで食べ,しばしば昆虫類も食べている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キジバト」の意味・わかりやすい解説

キジバト
きじばと / 雉鳩
rufous turtle dove
[学] Streptopelia orientalis

鳥綱ハト目ハト科の鳥。ウラル山脈より東のユーラシアに広く分布し、北方のものは南へ渡って越冬する。日本では、北海道から八重山列島(やえやまれっとう)まで繁殖しているが、北海道のものは、冬には南下してしまう。平地や低山の林に多く、ヤマバト(山鳩)の別名で親しまれている。全長約33センチメートル、体重200~300グラム。全体に赤みを帯びた灰色で、風切(かざきり)と尾は黒みが強い。肩と雨覆(あまおおい)の羽には、赤褐色の縁どりがありキジに似ているので、この名があるといわれている。尾の先端には淡青灰色の帯があり、飛ぶと目だつ。頸(くび)の両側に黒と淡青灰色の横縞(よこじま)模様があり、雌雄間のディスプレーのときに誇示される。おもに地上に落ちた草の種子、木の実を拾って食べる。木の枝に粗末な巣をつくり、2卵を産む。雌雄が交代で抱卵する。都会の街路樹にも巣をかけるが、造巣中または抱卵中になんらかの妨害を受けると、巣を捨てることが多い。巣の近くで羽音をたてながら急上昇し、翼と尾を広げた一見タカに似た飛翔(ひしょう)形で滑空するディスプレー飛行をすることが多い。町の中の民家にも飛来し、なれるとまったく人を恐れなくなる。狩猟鳥である。ヨーロッパには、やや小形の近縁種で英名を単にturtle doveというコキジバトS. turturが分布している。

[竹下信雄]


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百科事典マイペディア 「キジバト」の意味・わかりやすい解説

キジバト

ヤマバトとも。ハト科の鳥。翼長19cm。体は灰褐色,頸の両側に黒色の帯がある。アジア大陸の中南部に分布し,日本では全国の林に多い。近年,都市部にも増えた。北海道,本州北部や山地のものは冬季に温暖地に移る。植物食で,粗末な巣を枝上に作り,2卵を産む。デデッポッポーと鳴く。
→関連項目ハト(鳩)

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世界大百科事典(旧版)内のキジバトの言及

【ハト(鳩)】より

…カンムリバト亜科はニューギニア地方特産で,カンムリバト属Gouraの3種だけからなり,オオハシバト亜科はサモア島特産のオオハシバト1種だけを含む。 日本にはカラスバトColumba janthina,リュウキュウカラスバトC.jouyi,オガサワラカラスバトC.versicolorシラコバトStreptopelia decaocto(イラスト),ベニバトS.tranquebaricaキジバトS.orientalis(イラスト),キンバトChalcophaps indica,アオバトSphenurus sieboldii,ズアカアオバトS.formosaeの9種が分布するが,小笠原諸島特産のオガサワラカラスバトと琉球諸島特産のリュウキュウカラスバトは絶滅した。これらによく似たカラスバトは伊豆諸島や西南日本の離島に分布し,全身光沢を帯びた紫黒色の大型のハトである。…

※「キジバト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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