日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギンズブルグ」の意味・わかりやすい解説
ギンズブルグ
ぎんずぶるぐ
Евгения Семёновна Гинзбург/Evgeniya Semyonovna Ginzburg
(1906―1977)
ソ連の作家。作家アクショーノフの母。スターリン時代の粛清の嵐(あらし)のなかで1937年に逮捕され、「反革命テロリスト集団」に加わったという無実の罪のため、以後18年間を強制収容所(ラーゲリ)で送った。その体験をつづった『明るい夜暗い昼』(原題は『けわしい行路』)はソ連国内で公式に出版することができなかったが、地下出版(サミズダート)の形で広く読まれ、また国外では単行本として出版された(第1巻1967年、第2巻1979年、ともにイタリア、ミラノ)。「無邪気に共産主義を信じきっていた理想主義者」が過酷な試練のなかで精神的に成長する過程を描いたこの記録は、歴史の恥部を告発するにとどまらず、繊細な感覚に支えられた優れた文学作品にもなっている。
[沼野充義]
『中田甫訳『明るい夜暗い昼』『続・明るい夜暗い昼』(1972、81・平凡社)』