くしゃみ
鼻疾患の一般症状の一つで、鼻粘膜の分泌過多を訴えるアレルギー性鼻炎にしばしばおこるが、寒気、悪臭、異物などの刺激によっても、反射的におこることはよく経験される。アレルギー性鼻炎は、たび重なっておこるくしゃみ発作、多量の鼻水、鼻閉塞(へいそく)を主要な症状とし、鼻粘膜の浮腫(ふしゅ)と白血球成分の好酸球の浸潤が著明である。アレルギー性鼻炎とは、花粉、塵埃(じんあい)、牛乳、鶏卵、薬品、化粧品などの抗原によっておこる前述のような症状を意味するが、抗原が判明しないときには血管運動性鼻炎とよんだり、あるいは両者を一括して鼻過敏症とよぶこともある。生理的に、くしゃみは、鼻粘膜の三叉(さんさ)神経枝の刺激によって反射的におこるものと考えられている。また、強い光による突然の刺激で涙の分泌がおこり、これが涙管から鼻腔(びくう)に入ってくしゃみが出ることも知られている。
[渡辺 裕]
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くしゃみ【sneezing】
〈くさめ〉ともいい,ともに漢字では〈嚔〉の字をあてる。神経の活動により生体の反応としてあらわれる反射現象の一つ。不随意におこるもので,咳のように意識してすることはできない。鼻粘膜にごく軽い刺激が加えられると激しい吸気運動がおこる。肺内に入った多量の空気は,続く呼気運動により鼻腔に向かうが,このとき鼻咽腔閉塞がおこっているので空気呼出はここで一時遮断されることになる。これにより肺内空気圧は著しく上昇する。
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くしゃみ
鼻粘膜の刺激によって起こる激しい呼気運動。鼻腔内の異物排除のための防御(ぼうぎょ)反応と考えられ,中枢は延髄にある。刺激源は鼻汁,冷気,悪臭など。かぜをひくとよくくしゃみが出るのは,炎症のため鼻粘膜の感受性が高まっていることによる。強い光を見て起こることもあり,視神経とも関係があるといわれる。
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くしゃみ
sneeze
呼吸筋の不随意的,発作的なれん縮によって,空気が口,鼻から激しく放出される現象をいう。呼吸器の防御反応の一種。鼻アレルギー,鼻粘膜の刺激,炎症などの際にみられる。この反射は,鼻粘膜に対する刺激から始って三叉神経と嗅神経を介して起る。
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世界大百科事典内のくしゃみの言及
【呼吸】より
… 呼吸反射による神経性調節には,気道にある肺伸張受容器から起こるヘーリング=ブロイエル反射,肺刺激受容器,肺胞壁のJ受容器から起こる反射,肺血管反射,肺化学反射などをふくむ肺迷走神経反射がある。また,気道とくに咽頭,喉頭,気管,気管支内面にある咳の受容器の機械的および化学的刺激によって発生する求心性インパルスが,肺迷走神経内を上行して延髄に達してひき起こされる咳の反射,鼻腔内の受容器から三叉神経内を上行する求心性インパルスによって起こるくしゃみの反射のように,防御反射としての意味をもつ反射がある。このほか,皮膚,粘膜の化学刺激,温熱,機械的刺激などに応ずる非特異的受容器,骨格筋と腱の固有受容器からの反射も知られている。…
【しゃっくり】より
… 一般にみられる軽いしゃっくりは,自然に消失する。しゃっくりを止めるために,息こらえ,氷水の飲用,おどかし,鼻をこよりでくすぐってくしゃみを誘発させるといった民間療法が行われるが,これらの方法は安全だが確実ではない。しかし,これらは,より大きな刺激を与えてしゃっくりの原因刺激に対抗させようとするものであり,一応は試みたほうがよい。…
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