(読み)せき

デジタル大辞泉の解説

がい【咳】[漢字項目]

[音]ガイ(呉) [訓]せき せく しわぶき
〈ガイ〉せき。せきをする。「咳嗽(がいそう)謦咳(けいがい)鎮咳労咳
〈せき(ぜき)〉「空咳(からぜき)百日咳

せき【×咳】

《「」と同語源》のど・気管の粘膜が刺激されたとき、反射的に呼吸を止め、短く強く吐き出す息。また、その音。しわぶき。 冬》「―をする母を見あげてゐる子かな/汀女

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

百科事典マイペディアの解説

咳【せき】

咳嗽(がいそう)とも。気道粘膜が刺激されて反射的に起こる強い突発的な呼気運動。(たん)その他の気道内の異物を排出するための防衛反応であるが,ときに胸痛・腹痛を起こしたり肺病変を悪化させる。喀痰(かくたん)の多い湿性の咳は気管支炎肺炎肺結核などの際,喀痰の少ない乾性の咳は風邪の初期,インフルエンザ肺癌胸膜炎などの際みられる。→喀痰検査
→関連項目去痰薬鎮咳薬

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典 第2版の解説

せき【咳 cough】

医学的には〈咳嗽(がいそう)〉という。咳中枢の興奮によって生じる気道の防御反射。呼吸による気管内の気流の速さは,ふつう秒速6~7m程度であるが,咳の際には,ときに200~300mにも及ぶことがあり,台風の風速よりはるかに速い。これによって,気道内にたまった痰や異物をふきとばす。
[咳発生のしくみ]
 咳の動作は3段階にわけられる。(1)吸息期 深く息を吸い声門を閉じる。(2)加圧期 胸・胸壁の筋肉を一気に強く収縮させて,胸腔内の圧力を高め,ときに2気圧にも達する。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

大辞林 第三版の解説

すわぶき【咳】

せき。しわぶき。 「馬のあとで-をすればはねおとす/狂言・止動方角」

せき【咳】

〔「堰せき」と同源〕
のどや気管が刺激を受けたとき、呼気が急激に吐き出される現象。しわぶき。 [季] 冬。 《 -の子のなぞ〱あそびきりもなや /中村汀女 》

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


せき

咽頭(いんとう)、気管、気管支などの気道粘膜の刺激が、迷走神経を介して、呼吸筋を支配する神経線維に伝達され、反射的に肺の中の空気が気道から音をたて、爆発的に出る現象で、生体防御反応の重要な一つである。医学的には咳嗽(がいそう)ということもある。この現象は、生理学的には、短時間の吸気期、内圧の亢進(こうしん)する圧縮期、空気が急速に外に飛び出す駆出期と細かい段階に分けられている。咳は、通常、痰(たん)を伴う湿性と、伴わない乾性とに分類される。また、咳の出方は、日中・夜間といった時間帯や体の位置にも影響され、爆発的に、あるいは発作的に、ときにはいわゆる咳払い状に出ることがある。発作的に激しい咳が続き、顔面が紅潮または蒼白(そうはく)になって苦しみ、そのあと笛声(ふえごえ)というヒューといった音をたて、深い吸気を伴う咳は百日咳の特徴として知られている。咳は、元来、気管支の線毛運動などの生理的機能では除くことのできない異物の除去を目的とした反射であるため、塵(ちり)・煙などの環境の変化によっても容易におこるが、咳を症状とする疾患には次のようなさまざまなものがある。すなわち、扁桃(へんとう)炎、咽喉(いんこう)頭炎、副鼻腔(びくう)炎、アデノイド、喉頭癌(こうとうがん)などの上気道疾患、および、気管支炎、気管支喘息(ぜんそく)、肺うっ血水腫(すいしゅ)、塵肺(じんぱい)症、肺炎、肺結核、百日咳、肺ジストマ、肺癌、胸膜炎などの呼吸器疾患、さらに、耳内異物、外耳疾患、反回神経および横隔膜神経の反射、ヒステリーなどである。咳は防御反応の一つであるといっても、睡眠を妨げるばかりでなく、気道の内容を奥に押し込んだり、感染を他の部分に広げたり、胸膜の癒着がはがれたりする危険もあるので注意を要する。[渡辺 裕]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典の解説

がい【咳】

〘名〙 せき。また、せきばらい。
※史記抄(1477)一四「咳は二あり、咳嗽のしはぶきと、咳逆のしゃくりとなり」

しわ‐ぶき しは‥【咳】

〘名〙
① せきをすること。また、せき。すわぶき。《季・冬》
※岩淵本願経四分律平安初期点(810頃)「(シハフキ)すること患して、復た去ること能はず」
② 合図をしたり、制止したりするためのせきばらい。こわづくろい。
※枕(10C終)一一五「つねよりことにきこゆるもの。正月の車の音、また、鳥の声。あかつきのしはぶき。物の音はさらなり」

しわ‐ぶ・く しは‥【咳】

〘自カ四〙
① せきをする。せきこむ。《季・冬》
※堤中納言(11C中‐13C頃)花桜をる少将「築地のくづれより、白き物の、いたうしはぶきつつ出づめり」
② 合図したり、注意をひいたりするためにせきばらいをする。わざとせきをする。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「かの木のもとにおはし着きて、しはぶき給へば」

すわ‐ぶき すは‥【咳】

〘名〙 しわぶくこと。咳(せき)をすること。しわぶき。〔字鏡集(1245)〕
※虎明本狂言・止動方角(室町末‐近世初)「馬の跡ですはぶきをすれば、はねおとす」

すわ‐ぶ・く すは‥【咳】

〘自カ四〙 咳(せき)をする。しわぶく。
※俳諧・桃李(1780)「すはぶきて翁や門をひらくらむ〈几董〉 聟のえらびに来つるへんぐ〈蕪村〉」

せき【咳】

〘名〙 (「せき(塞)」と同語源) 喉頭や気管支の壁に分布した迷走神経が刺激されて起こる、はげしい呼気運動。しわぶき。咳嗽(がいそう)。また、つねに咳をする呼吸器病。《季・冬》
※天理本狂言・止動方角(室町末‐近世初)「此馬にはくせがあると云て、せきにをどろく事を云て」
滑稽本・麻疹戯言(1803)送麻疹神表「とめてとまらぬ咳嗽(セキ)をなん苦みける」

せ・く【咳】

〘自カ四〙 (「せく(塞)」と同語源) せきをする。せきが出る。せきばらいする。しわぶく。
※俳諧・望一千句(1649)九「ねぬとしりてやにぐるぬす人 せきをせく声も立田の月のよに」
※好人物の夫婦(1917)〈志賀直哉〉二「痰が肺へ溜る為に呼吸する場所が狭くなる。そして其痰を出す為にせく」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典内のの言及

【喉頭】より

…これには披裂喉頭蓋レベル,仮声帯レベル,声帯レベルの三つの高さで,それぞれ喉頭腔を閉鎖する働きがある。これによって異物が下気道に侵入することを防ぐが,万一,喉頭腔内に異物が迷入すれば反射的な咳が起こり,これを排除する。発声機能は,とくにヒトではコミュニケーションの面で重要な位置を占めている。…

【呼吸】より

… 呼吸反射による神経性調節には,気道にある肺伸張受容器から起こるヘーリング=ブロイエル反射,肺刺激受容器,肺胞壁のJ受容器から起こる反射,肺血管反射,肺化学反射などをふくむ肺迷走神経反射がある。また,気道とくに咽頭,喉頭,気管,気管支内面にある咳の受容器の機械的および化学的刺激によって発生する求心性インパルスが,肺迷走神経内を上行して延髄に達してひき起こされるの反射,鼻腔内の受容器から三叉神経内を上行する求心性インパルスによって起こるくしゃみの反射のように,防御反射としての意味をもつ反射がある。このほか,皮膚,粘膜の化学刺激,温熱,機械的刺激などに応ずる非特異的受容器,骨格筋と腱の固有受容器からの反射も知られている。…

【鎮咳薬】より

を止める薬で,俗に〈咳止め〉ともいう。咳がおこる機構は複雑であるが,気道内の異物,分泌物,炎症などが気道粘膜を刺激して気管を収縮させるのが咳反射の引金になると考えられる。…

※「咳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

出入国在留管理庁

政府が2019年4月に発足を予定している法務省の外局。18年12月の出入国管理法改正案成立に伴う外国人労働者の受け入れ拡大に対応するため、同省の内部部局である入国管理局を再編・格上げし、新設することが...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

咳の関連情報