クリプトン

デジタル大辞泉 「クリプトン」の意味・読み・例文・類語

クリプトン(krypton)

希ガス元素の一。空気中に微量存在する無色無臭の気体。原子スペクトル波長は長さの単位メートルの基準にされる。元素記号Kr原子番号36。原子量83.80。

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精選版 日本国語大辞典 「クリプトン」の意味・読み・例文・類語

クリプトン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] krypton ギリシア語の kryptos (隠れたの意)にちなんで命名 ) 不活性ガス元素の一つ。記号 Kr 原子番号三六。原子量八三・八〇。無色無臭の不活性気体。一八九八年、イギリスラムゼートラバース液体空気から分離して発見。単原子分子として空気中に微量存在。蛍光灯白熱電球に封入して放射効率を高めるのに用いられる。〔英和和英地学字彙(1914)〕

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化学辞典 第2版 「クリプトン」の解説

クリプトン
クリプトン
krypton

Kr.原子番号36の元素.電子配置[Ar]3d104s24p6周期表18族希ガス元素.原子量83.798(2).安定同位体核種は,質量数78(0.355(3)%),80(2.286(10)%),82(11.593(31)%),83(11.500(19)%),84(56.987(15)%),86(17.279(41)%)の6種.質量数69~97までの27種の放射性核種が知られている.81Kr がもっとも長寿命で,半減期2.29×105 y で軌道電子捕獲により 81Br に崩壊する.もっとも重要な核種は,核分裂生成物の一つである 85Kr(クリプトン85)で,半減期10.78 y のβ崩壊核種.1898年,W. Ramsay(ラムゼー)とM.W. Traversによって液体空気の分留中に発見された.ギリシア語の“かくされたもの”(κρνπτοζ)から名づけられた.大気中に1.14体積 ppm,火星の大気中にも0.3体積 ppm 存在する.液体空気の分留最後の留分から得られる.無色,無臭の気体.融点-157.36 ℃,沸点-152.3 ℃,臨界温度-63.69 ℃(209.46 K),三重点-157.39 ℃(115.76 K).密度2.443 g cm-3(115.77 K,液体).第一イオン化エネルギー1350.7 kJ mol-1(13.9996 eV).化学的に不活性であるが,1963年にKrF2が合成された([別用語参照]クリプトン化合物).用途は,橙赤色の発光スペクトル線を利用して,空港等の施設の照明灯,投影用ランプ充填ガスなど.クリプトンガスレーザーは網膜などの手術に使われる.1983年の国際度量衡機構総会で真空中の光速を基準にするまで,1960年から 86Kr の橙赤色スペクトル線の波長605.780211 nm の1650763.73倍が1 m と定義されていた.[CAS 7439-90-9]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クリプトン」の意味・わかりやすい解説

クリプトン
くりぷとん
krypton

希ガス元素(貴ガス元素)の一つ。原子番号36、元素記号Kr。1898年イギリスのラムゼーらによって液体空気のアルゴン留分(分別蒸留で得られた各成分)から発見された。命名はギリシア語の「隠れたもの」chryptosに由来する。大気中のほか、天然ガス、温泉、火山ガスなどにも極微量に存在する。天然には6種の安定同位体が存在するが、ウラン233、235、238およびトリウム232の核分裂によって多種類の放射性同位体も生成し、核爆発実験・原子炉事故や原子炉操業・燃料棒再処理などによって大気圏に拡散されたものもある。それらの中でクリプトン85の半減期は10.756年と長く、その大気中での濃度は、放射性核汚染の指標の一つになっている。

 工業的には液体酸素留分から分留と吸着法を利用して採集される。蛍光灯の効率を向上させるための封入ガス、また白熱電球内のタングステンの蒸発を抑制して寿命を長くするための封入ガスなどに使われる。

 化学的には不活性で、水、キノール、フェノールなどをホストとする包接化合物の生成のみが知られていたが、キセノンの化合物に続いて、クリプトンのフッ化物KrF2, KrF4なども合成できるようになった。

[岩本振武]



クリプトン(データノート)
くりぷとんでーたのーと

クリプトン
 元素記号  Kr
 原子番号  36
 原子量   83.798
 融点    -156.6℃
 沸点    -153.35℃
 密度    3.733g/dm3(0℃,1気圧)
 元素存在度 宇宙 64.4(第29位)
          (Si106個当りの原子数)
       海水 0.2μg/dm3

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改訂新版 世界大百科事典 「クリプトン」の意味・わかりやすい解説

クリプトン
krypton

周期表第0族に属する希ガス元素の一つ。1898年5月,イギリスのW.ラムゼーとトラバースMorris William Traversは,液体空気を分留してアルゴンArをとり出した後に残る液体から,重い気体の新元素を発見し,ギリシア語のkryptos(隠れたもの)にちなんでクリプトンと命名した。空気中の含有量は1.1×10⁻4体積%。無色,無臭の気体。単原子分子からなり(原子半径2.00Å),化学的にきわめて不活性。水和物Kr・5.76H2O(分解圧0.1℃で14.5気圧)やヒドロキノンとの間にKr・3C6H4(OH)2をつくるが,これらはクラスレート化合物であって,水分子やヒドロキノン分子の水素結合によって生ずる三次元網目構造の中にクリプトン原子がとりこまれたもので,原子価結合のある真の化合物ではない。真の化合物としては,1962年のキセノンの化合物の合成につづき,63年ターナーJ.J.TurnerらがはじめてKrF2を合成し,以後いくつかの化合物が合成されている。
希ガス化合物
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クリプトン」の意味・わかりやすい解説

クリプトン
krypton

元素記号 Kr ,原子番号 36,原子量 83.80。天然には6つの安定同位体が存在する。周期表 18族,希ガスの1つ。 1898年イギリスの化学者 W.ラムゼーと M.トラバースにより液体空気中から発見された。大気中の存在量 1×10-4 % (体積) 。液体空気の分留によって製造する。単体は無色,無臭,無味の単原子気体。融点-156.6℃,沸点-152.9℃。各種の包接化合物が知られているほか,1963年以降,フッ化物が合成されている。しかし一般には化学的に不活性である。白熱電球に封入されることがあるほか,放射性クリプトンの半減期は約 10年のため,半永久的トレーサーとして,化学分析,物質の構造研究に広く利用されるようになった。

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百科事典マイペディア 「クリプトン」の意味・わかりやすい解説

クリプトン

元素記号はKr。原子番号36,原子量83.798。融点−156.6℃,沸点−153.35℃。希ガス元素の一つ。1898年ラムゼーとトラバースが発見。ギリシア語のkruptos(かくれたもの)にちなんで命名。無色無臭の気体。化学的に不活性だが,KrF2などの化合物が知られている。
→関連項目希ガス

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栄養・生化学辞典 「クリプトン」の解説

クリプトン

 原子番号36,原子量83.80,元素記号Kr,18属(旧VIIIa族もしくは0族:稀ガス)の元素.

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