改訂新版 世界大百科事典 「コゴメグサ」の意味・わかりやすい解説
コゴメグサ (小米草)
eyebright
Euphrasia
山地の日当りの良い草地に生える,ゴマノハグサ科の小さな一年草で半寄生植物。和名は,白い小さな草が米粒を思わせるのでついた。南北両半球の温帯域に分布する。茎は直立または斜上し,単一かまばらに分枝して高さ3~30cm,まばらに曲がった白毛が生える。葉は対生し,披針形から広卵形で,1~6対の粗い鋸歯がある。夏,茎頂近くの葉のわきごとに白い花を1個つける。花冠は白色で唇弁に紫の条があり,上唇はかぶと形で先は2裂して反りかえり,下唇は広く開いて先が3裂する。蒴果(さくか)は扁平な楕円形または倒卵形で,先がへこむ。
コゴメグサの名をイブキコゴメグサに当てる人もいるが,江戸時代にはどこのものもコゴメグサと呼んで区別していなかったようである。たまたま飯沼慾斎が伊吹山のものを図に描き,それに学名がつけられたが,コゴメグサの名をそれだけに限定してしまうわけにはいかない。日本のコゴメグサ属全体の総称であろうと思う。
日本のコゴメグサ属でよく見られるのは,ミヤマコゴメグサ類とタチコゴメグサ類である。前者は萼が鐘形で,花は比較的大きく,長さ8~9mmある。地理的変異が多く,東北地方にホソバコゴメグサ,中部地方北部にミヤマコゴメグサ,伊吹山にイブキコゴメグサ,四国にトサコゴメグサなどがある。後者は萼が狭鐘形で,花は6~7mmで日本全土の低山地に生育する。利用されることの少ない植物群であるが,ヨーロッパからヒマラヤにかけて分布するE.officinalis L.は,薬用にされる。
執筆者:山崎 敬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報