翻訳|direct tax
租税の分類において、間接税に対する語。直接税と間接税との分類はいろいろな基準に基づいて行われるが、租税の転嫁の有無に基づくのがもっとも一般的であり、それによると、その租税を究極的に負担するものから直接徴収される税が直接税である。この分類法はフィジオクラート(重農主義者)によって発展させられ、広く受け入れられてはいるが、分類の基準となる租税の転嫁の有無ということが税目ごとに明確であるわけではなく、異なる時と所における関係者の力関係により決定されるという欠点を有している。この分類法を修正するものとして、客観的事実としての転嫁の有無というよりは、立法者の意図する転嫁についての前提を基準とする分類法がJ・S・ミルなどにより提唱された。立法者の意図も転嫁についての客観的事実のいかんにより影響を受けるであろうが、客観的事実についてはかならずしも明らかでない場合にも、立法者の意図という基準ならば明確な形で規定できる。しかし、この分類法も、同じ税目について、時と所が異なると立法者の意図が同一になるとは限らないという欠点がある。また、税務行政技術上の分類法として、租税台帳または納税者名簿によって課される税が直接税、税率表によってかけられる税が間接税というものがあり、フランスにおいて広く受け入れられている。直接税と間接税との分類は、負担能力の把握方法という観点からもなされている。この分類法によると、直接税とは、負担能力を直接的に表現する所得ないし財産に対して課される税であり、間接税とは、負担能力を間接的に推測せしめる支出ないし消費に対して課される税である。
直接税と間接税の税収比率を直間比率とよぶが、経済協力開発機構OECDの「Revenue Statisitics」の分類では、所得課税、給与労働力課税および資産課税のうち流通課税を除いたものを直接税、それ以外の消費課税等が間接税等とされる。この分類に従った国税の直間比率は日本60:40、アメリカ94:6、イギリス58:42、ドイツ46:54、フランス54:46である。国税と地方税の合計では日本71:29、アメリカ78:22、イギリス61:39、ドイツ52:48、フランス53:47である。
日本の租税制度改革の議論においても、直接税の比率を下げて間接税にもっと依存しようという主張が展開されるが、直接税は間接税に比べて納税者の負担意識が強く、したがって租税抵抗が高いことがその理由の一つとしてあげられる。また、直接税はしばしば高度の累進税率で課税され、高い限界税率が勤労意欲、貯蓄意欲、投資意欲などを減殺し、経済に歪曲(わいきょく)効果を与える点が指摘され、付加価値税をはじめとした間接税への移行が一般的にみられる。さらに、租税の公平という観点からみても、税務行政上の対応が不十分な場合には、かならずしも直接税のほうが公平とはいえない点も指摘されている。所得種類や納税者の種類による所得捕捉(ほそく)率の違いから生ずる不公平は、その典型的な例として、しばしば批判の的とされている。
[林 正寿]
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(浦野広明 立正大学教授・税理士 / 2007年)
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… 第2次大戦後の日本の税制は,1950年のシャウプ勧告にもとづく税制改革を出発点とする。シャウプ税制は,所得税と体系的に関連づけられた法人税,富裕税および相続税といった直接税を中心とし,補完税として酒税,専売益金といった間接税を配する理論的に首尾一貫した体系であった。ところが,戦後の税制の歴史はシャウプ税制の崩壊過程の歴史であるといわれるように,相次ぐ改正によりさまざまな問題点が生じてきた。…
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