直接税(読み)チョクセツゼイ(英語表記)direct tax

翻訳|direct tax

デジタル大辞泉 「直接税」の意味・読み・例文・類語

ちょくせつ‐ぜい【直接税】

法律上の納税義務者実際租税負担者とが一致することが予定されている租税。所得税法人税相続税など。直税。→間接税

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精選版 日本国語大辞典 「直接税」の意味・読み・例文・類語

ちょくせつ‐ぜい【直接税】

  1. 〘 名詞 〙 納税義務者と実際の租税負担者が一致している租税の総称国税における所得税・法人税・相続税、地方税における住民税事業税固定資産税など。直税。⇔間接税
    1. [初出の実例]「左の諸税を以て直接税とし、其他は間接税とす」(出典:大蔵省告示第九五号‐明治二一年(1888)七月一三日(法令全書))

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「直接税」の意味・わかりやすい解説

直接税
ちょくせつぜい
direct tax

租税の分類において、間接税に対する語。直接税と間接税との分類はいろいろな基準に基づいて行われるが、租税の転嫁の有無に基づくのがもっとも一般的であり、それによると、その租税を究極的に負担するものから直接徴収される税が直接税である。この分類法はフィジオクラート(重農主義者)によって発展させられ、広く受け入れられてはいるが、分類の基準となる租税の転嫁の有無ということが税目ごとに明確であるわけではなく、異なる時と所における関係者の力関係により決定されるという欠点を有している。この分類法を修正するものとして、客観的事実としての転嫁の有無というよりは、立法者意図する転嫁についての前提を基準とする分類法がJ・S・ミルなどにより提唱された。立法者の意図も転嫁についての客観的事実のいかんにより影響を受けるであろうが、客観的事実についてはかならずしも明らかでない場合にも、立法者の意図という基準ならば明確な形で規定できる。しかし、この分類法も、同じ税目について、時と所が異なると立法者の意図が同一になるとは限らないという欠点がある。また、税務行政技術上の分類法として、租税台帳または納税者名簿によって課される税が直接税、税率表によってかけられる税が間接税というものがあり、フランスにおいて広く受け入れられている。直接税と間接税との分類は、負担能力の把握方法という観点からもなされている。この分類法によると、直接税とは、負担能力を直接的に表現する所得ないし財産に対して課される税であり、間接税とは、負担能力を間接的に推測せしめる支出ないし消費に対して課される税である。

 直接税と間接税の税収比率直間比率とよぶが、経済協力開発機構OECDの「Revenue Statisitics」の分類では、所得課税、給与労働力課税および資産課税のうち流通課税を除いたものを直接税、それ以外の消費課税等が間接税等とされる。この分類に従った国税の直間比率は日本60:40、アメリカ94:6、イギリス58:42、ドイツ46:54、フランス54:46である。国税と地方税の合計では日本71:29、アメリカ78:22、イギリス61:39、ドイツ52:48、フランス53:47である。

 日本の租税制度改革の議論においても、直接税の比率を下げて間接税にもっと依存しようという主張が展開されるが、直接税は間接税に比べて納税者の負担意識が強く、したがって租税抵抗が高いことがその理由の一つとしてあげられる。また、直接税はしばしば高度の累進税率で課税され、高い限界税率が勤労意欲、貯蓄意欲、投資意欲などを減殺し、経済に歪曲(わいきょく)効果を与える点が指摘され、付加価値税をはじめとした間接税への移行が一般的にみられる。さらに、租税の公平という観点からみても、税務行政上の対応が不十分な場合には、かならずしも直接税のほうが公平とはいえない点も指摘されている。所得種類や納税者の種類による所得捕捉(ほそく)率の違いから生ずる不公平は、その典型的な例として、しばしば批判の的とされている。

[林 正寿]

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百科事典マイペディア 「直接税」の意味・わかりやすい解説

直接税【ちょくせつぜい】

税法上の納税義務者と実際の租税負担者とが同一である(または同一と予定されている)税。間接税に対するが,両者の区別については学説が分かれている。所得税,法人税,相続税,固定資産税,住民税など。→直間比率
→関連項目法人税

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「直接税」の意味・わかりやすい解説

直接税
ちょくせつぜい

税の分類方法の一つ。間接税に対するもの。その分類基準は歴史的にも種々のものがあったが,一般に用いられる区分では,納税義務者と担税者が一致することが予定される税を直接税とする。したがって,納税義務者が酒類製造者などであって,担税者が消費者である酒税は間接税であり,納税者および担税者がともに所得者本人である所得税は直接税である。しかし,この区分も税の転嫁の実際においては,曖昧なものとなる。直接税は間接税に比べ累進課税をとりやすいが,納税者の担税感は強くなるなどの特色がある。

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知恵蔵 「直接税」の解説

直接税

納税義務者と税負担者とが同一人であることを想定している租税を直接税、納税者と税負担者とが別人であることを想定している租税を間接税という。所得税、法人税、相続税などは前者に属し、消費税、酒税などは後者に属する。直接税は納税者に税の痛みを意識させ、能力に応じて税を負担させる建前となっている。消費税などの大型間接税は能力に応じて税を負担させることがない。日本の戦後税制は、直接税を中心とする体系となっていたが、消費税の導入により、その体制が変わってきている。

(浦野広明 立正大学教授・税理士 / 2007年)

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世界大百科事典(旧版)内の直接税の言及

【租税】より

… 第2次大戦後の日本の税制は,1950年のシャウプ勧告にもとづく税制改革を出発点とする。シャウプ税制は,所得税と体系的に関連づけられた法人税,富裕税および相続税といった直接税を中心とし,補完税として酒税,専売益金といった間接税を配する理論的に首尾一貫した体系であった。ところが,戦後の税制の歴史はシャウプ税制の崩壊過程の歴史であるといわれるように,相次ぐ改正によりさまざまな問題点が生じてきた。…

※「直接税」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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