シュンギク(読み)しゅんぎく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュンギク」の意味・わかりやすい解説

シュンギク
しゅんぎく / 春菊
[学] Glebionis coronaria (L.) Cass. ex Spach
Chrysanthemum coronarium L.

キク科(APG分類:キク科)の一年草。地中海沿岸地方原産で、野菜として栽培される。茎はよく分枝し、高さ1.5メートルに達する。葉は2回羽状に深裂し、柄がなく茎を抱くようにつき、互生する。高温長日条件下で開花し、自然条件下では4月下旬から5月下旬に直径3~4センチメートルの黄色または白色の頭状花をつける。種子は長さ2~3ミリメートルの角柱形で6月ころ熟す。種子には休眠期があるので、発芽率は一般に低い。全草に芳香があり、春の若苗や葉を食用にする。春菊の名はこれに由来するが、春に花が咲くからともいう。古い時代に地中海沿岸から中国へ伝わり、中国から日本へ伝来したと考えられ、江戸時代に最初の栽培の記録(1688)がある。現在シュンギクを栽培しているのは、日本のほか中国、フィリピン、タイ、インド、ジャワなどで、東洋独特の野菜である。欧米では観賞用としてのみ栽培される。

 変種ハナゾノシュンギクは、花は二重または三重から八重のものまであり、花壇、切り花用に栽培される。

[星川清親 2022年2月18日]

栽培

春または秋に種を播(ま)く。生育適温は20℃前後で、3~6月と9~10月にもっともよく生育する。一方、需要がもっとも多いのは鍋物(なべもの)に用いる冬なので、関東では11月から、関西では12月からは霜よけをして覆下(おおいした)栽培が行われる。収穫は、本葉が8~10枚、草丈が15~20センチメートルに生育したときに行う。種播きから収穫までの期間は、春から秋は30~35日、秋播き冬どり栽培では45~120日である。全国的に栽培されるが、関東地方以西の都市近郊に多い。葉が細く裂け、薄いものをセリバシュンギク、葉が厚く、へら形で刻みの浅いものをオタフクまたはリュウキュウシュンギクという。

[星川清親 2022年2月18日]

食品

特有の香りと鮮やかな緑色が喜ばれ、とくに冬の鍋(なべ)料理には不可欠のものとされ、昭和40年代から生産が急増している。それに伴い、ひたし物、和(あ)え物、てんぷらなどの利用も増えている。なまの葉100グラム中に、ビタミンC21ミリグラム、カロチン3400マイクログラムを含み、緑色野菜としての価値は高い。日本料理では、色よく塩ゆでし、水にさらしてから適宜に切って利用するが、ゆですぎないことが肝心である。中国料理ではスープや炒(いた)め物、粥(かゆ)の青みなどに用いる。俳諧(はいかい)では春の季語だが、現在では消費のピークは12月ころである。

[星川清親 2022年2月18日]


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改訂新版 世界大百科事典 「シュンギク」の意味・わかりやすい解説

シュンギク (春菊)
garland chrysanthemum
Chrysanthemum coronarium L.

葉を食用に,また花を観賞用に栽培するキク科の一年草。キクナとも呼ばれる。地中海地方の原産で,日本には300~400年前に中国から渡来したらしく,宮崎安貞の《農業全書》にはすでに栽培法が記載されている。全草無毛で葉は柄がなく2回羽状複葉,葉縁には鋸歯がある。外周に舌状花を有する大きな頭花は黄色で,舌状花の先端が白くなるものもある。高温長日下で抽だい(とう立ち)する。品種の分化は十分ではないが,大葉種,中葉種,小葉種に分けられる。大葉種のなかには,さじ形の葉がほとんど切れ込まない品種もある。小葉種は耐暑性,耐寒性がある。生育期間が短いので回転は早い。作型は播種(はしゆ)期によって春まき栽培,夏まき栽培,秋まき栽培,ビニル利用の越冬栽培が確立し,ほぼ周年にわたって出荷される。傷みやすい軟弱野菜なので,産地は大都市近郊に集中している。軟質で,芳香とほろ苦さをもつため好まれ,浸し物にして利用したり,なべ料理に欠くことのできない野菜である。ビタミンAにも富んでいて保健野菜でもある。シュンギクを野菜として利用するのは中国や日本などのアジア諸国だけで,もともとは花を観賞するために地中海域で栽培された。花が八重化したハナゾノシュンギクは切花にも利用される。
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食の医学館 「シュンギク」の解説

シュンギク

《栄養と働き&調理のポイント》


 地中海沿岸が原産地のキク科。春に黄色の花を咲かせるのでこの名がつきました。食用に栽培しているのはわが国や中国などの東アジアだけで、ヨーロッパでは観賞用として栽培されています。
○栄養成分としての働き
 ビタミンB群、C、カリウム、鉄などを多く含み、がん、貧血、高血圧症などの予防に有効です。
 栄養面でもっとも特徴的なのは、カロテンの含有量です。100g中4500μgとホウレンソウ、コマツナなどを上回ります。カロテンは細菌やウイルスに対する免疫力を高めるので、かぜを予防し、Cとの相乗効果で肌を健やかにします。
 シュンギクには特有の香りがありますが、これはα(アルファ)―ピネン、ベンズアルデヒドなどの精油成分によるものです。これらの成分は、胃腸の働きを促進し、たんを切る作用があるといわれます。また、濃い緑色はクロロフィルという色素で、血中コレステロールを下げる働きがあります。
 旬(しゅん)は11~3月で、冬においしくなる野菜です。ゴマ和え、しら和えのように、脂質の高い種実類やとうふなどといっしょにとると、カロテンの吸収がよくなります。

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百科事典マイペディア 「シュンギク」の意味・わかりやすい解説

シュンギク

春菊。キクナとも。地中海沿岸原産のキク科の一〜二年生の野菜。日本へは中国から導入され,《農業全書》(1697年刊)に記録がある。高さ30〜60cm,葉は羽状に裂ける。頭花はキクに似て径3cm内外,淡黄色。葉にはかおりがあり,ひたし物,汁の実などとされ,ほぼ周年出荷される。花を観賞する品種もある。
→関連項目キク(菊)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シュンギク」の意味・わかりやすい解説

シュンギク(春菊)
シュンギク
Chrysanthemum coronarium; garland chrysanthemum

キク科の一年または越年草。地中海地方原産。日本と中国で野菜として栽培され冬から春の間に若い苗をとって食用とする。全草に独特の香りがある。葉は互生して2回羽状に深く裂け,葉柄はなく基部は茎を抱く。春に株の中央に茎 (いわゆる薹〈とう〉) を伸ばし,5月頃に茎頂に径約 3cmの頭状花をつける。周辺には黄色,ときに白色の雌性の舌状花が並び中心部は黄色で両性の管状花から成る。

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事典 日本の地域ブランド・名産品 「シュンギク」の解説

しゅんぎく[葉茎菜類]

近畿地方、大阪府の地域ブランド。
主に堺市・岸和田市・貝塚市などで生産されている。関東では春菊というが、大阪では葉を食べる菊菜と呼ばれる。大阪府は全国有数のしゅんぎく生産地。カルシウムなどの無機質やビタミンAを多く含んだ緑黄色野菜。大阪産はあくが少ない。

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報

栄養・生化学辞典 「シュンギク」の解説

シュンギク

 [Chrysanthemum coronarium].キク目キク科シュンギク属の一〜二年草.食用にする.

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