ストロマトライト(読み)すとろまとらいと(英語表記)stromatolite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ストロマトライト」の意味・わかりやすい解説

ストロマトライト
すとろまとらいと
stromatolite

生物起源の堆積(たいせき)構造をもつ岩石一種石灰質か珪(けい)質で、厚さ数マイクロメートルから数ミリメートルの葉理からなる。形態はマット状、ドーム状、球根状、柱状など変化に富む。大きさは数ミリメートルのものから数十メートルに達するものまである。多くのストロマトライト藍藻類(らんそうるい)(シアノバクテリア)により形成される。しかし、藍藻類以外の微生物がその形成に重要な役割を果たしているものもある。ストロマトライト特有の葉理は、藍藻類の成長速度や構成種、供給される砕屑(さいせつ)物の種類や量、そして形成環境の周期的変化を反映するものと考えられている。先カンブリア時代から現世まで認められる。西オーストラリアノースポールで発見された約35億年前のフィラメント状バクテリア化石は、ストロマトライトに保存されていた。また、同じく西オーストラリアのハメリンプールでは、現世のストロマトライトが形成されている。

[谷村好洋]

『福田芳生著『化石探検PART1 ストロマトライトから穿孔貝まで』(1989・同文書院)』『NHK取材班著『NHKサイエンス・スペシャル 生命40億年はるかな旅(1)――海からの創生』(1994・日本放送出版協会)』『熊澤峰夫・伊藤孝士・吉田茂生編『全地球史解読』(2002・東京大学出版会)』『酒井治孝著『地球学入門――惑星地球と大気・海洋のシステム』(2003・東海大学出版会)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ストロマトライト」の意味・わかりやすい解説

ストロマトライト
stromatolite

糸状体の原核微生物の群集がつくる堆積構造に由来する岩石のこと。藻構造ともいう。原始的な藻類である藍藻類は,分泌粘液を細胞から出し,夜間には海中の石灰質やケイ質の粒をとらえ固着し,石灰質あるいはケイ質の皮膜,薄層をつくる。昼にはこの皮膜や薄層の表面でさらに藍藻類が成長し,夜間,再び皮膜や薄層をつくる。この繰り返しで,ドーム状,枕状,柱状など多様な形態をもつ厚さ数mmから数μmの葉理の重なりができる。オーストラリアの西北海岸で今日生成されているものが著名。また,藍藻類とバクテリアが,またはバクテリアだけが形成にかかわっている場合もあるらしく,アメリカ合衆国イエローストーン国立公園温泉沈殿物はバクテリアが関与しているとされる。先カンブリア時代のものは世界各地で多数知られており,その構造の周期的変化から,たとえば当時の 1年が約 400日だったことなどが推定されている。

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