日本大百科全書(ニッポニカ) 「スト規制法」の意味・わかりやすい解説
スト規制法
すときせいほう
正式名称は「電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律」(昭和28年法律171号)。電気事業と石炭鉱業に業種を限定し、かつ争議行為そのものを禁止するものではなく、その方法に対して重大な制約を加える法律。1953年(昭和28)に3年間の時限立法として制定されたが、1956年に国会で存続決議が行われ、現在も効力を有する。両業種での争議行為に対しては労働関係調整法上の制限があるが、それに加えて本法が制定された理由は、第一に、朝鮮戦争後の不況期において労働運動が再高揚した際、その中心となっていたのが電産(日本電気産業労働組合)と炭労(日本炭鉱労働組合)だったからである。とくに、1952年秋にはこれらの組合が電源ストや保安要員引き揚げなどの戦術による長期ストを行った。第二には、民間基幹産業であるエネルギー産業での争議行為を規制し、高度経済成長政策の推進が企図されたからである。
本法では、電気の正常な供給に障害を生じさせる行為、および鉱山保安法に規定する保安業務の正常な運営の停廃行為であって、人に対する危険および鉱物資源・鉱山施設の損壊などを争議行為として行うことを労使に禁止している。本法の違反に罰則は設けられていないが、代償措置もなく争議権を制限していること、本来、使用者の責任である企業財産の維持を労働者に義務づけていること、さらに石炭産業の地位の低下などからみて、争議権を不当に制限する法令といえる。
[吉田美喜夫]