ドイツの作家。東プロイセンのハイデクルーク近郊でビール醸造業者の子として生まれる。父の事業の失敗後、苦学してベルリンなどの大学で学び、ジャーナリストとなる。1887年、処女作『憂愁夫人』で作家としてデビューしたが、彼の名を一躍高めたのは、89年ベルリンで「自由劇場」がハウプトマンの『日の出前』に続いて上演したドラマ『名誉』であった。この成功でシラーをもしのぐ劇作家として、ハウプトマンと並び自然主義を代表する作家と称せられた。以後、芸術家の悲劇を描いた『ソドムの末路』(1891)、1912年日本でも島村抱月(ほうげつ)・松井須磨子(すまこ)の芸術座により上演された『故郷』(1893)、さらに喜劇『蝶々(ちょうちょう)合戦』(1895)など次々にドラマを発表したが、ズーダーマンは本来イプセンの系譜に属する自然主義作家ではない。彼のドラマは、イフラント、コッツェブーなどの市民劇形式に、デュマ(父)、サルドゥーにみられるフランス対話劇の会話を取り入れ、新旧時代の転換期における時事問題を自然主義的手法で表した「舞台芸術の名人芸」を示すものであった。彼の芝居は一時期大衆の喝采(かっさい)を博したが、作家としての本領はフォンターネの作風を受け継ぎ、早くもトーマス・マンの心理的描写法やフレンセン、リーンハルトの郷土文学の特徴をうかがわせる小説にあった。作品としては『猫橋(ねこばし)』(1889)、『気の狂った教授』(1926)、故郷の風土と生活を自然主義的手法で描いた『リタウエン作品集』(1917)などがある。
[谷口 泰]
『生田春月訳『猫橋』(創元文庫)』
ドイツ自然主義の劇作家,小説家。デュマ・フィス,サルドゥーらのフランス風俗劇の影響に基づく社会劇《名誉》(1889),《故郷》(1893)などを書いて,市民社会の道徳的退廃を批判し,ハウプトマンと並び称された。故郷の地方作家としての素顔を示す小説は,東プロイセンの素朴な民衆生活を造形力豊かに描いている。処女作《憂愁夫人》(1887)は現代の発展小説,郷土文学に強い刺激を与えた。
執筆者:石丸 昭二
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