日本大百科全書(ニッポニカ) 「セムセイ鉱」の意味・わかりやすい解説
セムセイ鉱
せむせいこう
semseyite
鉛とアンチモンの硫塩鉱物。プラジオナイトplagionite(化学式Pb5Sb8S17)群鉱物の一つ。自形はb軸方向に伸び、a軸方向にやや平らな柱状。これが集合して花飾り様の集合あるいは球状の集合を形成する。深熱水性鉱脈型、気成鉱脈型、接触交代型銅・亜鉛・鉛・錫(すず)などを含むいわゆる多金属鉱床に見られる。日本では埼玉県秩父(ちちぶ)市秩父鉱山から産する。
同定は形態が見えていても同じ群の構成員とは識別できない。結晶軸と斜交する劈開(へきかい)が見えていると見当のつくことがある。命名はハンガリーの貴族で鉱物愛好家であったアンドル・フォン・セムセイAndor von Semsey(1833―1923)にちなむ。なおアンドル鉱andorite(AgPbSb3S6)も彼にちなんで命名されたものである。
[加藤 昭]