雷雲が近づいたとき、とがった物体の端から出る薄青い光。とくに山頂や尾根などでおこりやすい自然現象である。この名称は、昔、地中海の船乗りたちが、船のマストや帆桁(ほげた)の端にともったこの火を見て、彼らの守護聖者である聖エルモが現れたと信じたことに由来する。
雷雲の直下では大気中の電場の強さが平常値の100倍以上になる。とくに地表から突出した物体の先端ではそれがいっそう強められるので、ついにはその付近の空気の絶縁が局所的に破壊され、発光を伴ったブラシ状の放電を始める。これは実験室内の実験でも再現できることで、コロナ放電とよばれ、火花放電の前の段階でおこる現象である。山頂や尾根付近で、とがった物の端にこの火が見えれば、雷による強電場がかかっている明らかな証拠であり、落雷の危険が間近に迫っていることの警報でもある。ただし、昼であれば光は見えず、シューシューという小さな放電音が聞かれる。
[三崎方郎]
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雷雨やあらしの夜に,船のマスト,教会の塔などの先端に現れる青紫色の炎状の光。急峻な山の頂上でことによく現れる。昔,地中海の船人が船のマストに現れるのを見て,セント・エルモ(船乗りの守護聖人エラスムスSt.Erasmusのなまったもの)の加護のしるしだと考え,こう名付けた。頭上の強く帯電した厚い雲(対流雲)や雷雲の影響で,地表の大気電界(距離に対する電位差の比)が大きくなったときに現れる一種の放電現象である。
執筆者:北川 信一郎
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