六訂版 家庭医学大全科 「チョコレート嚢胞」の解説
チョコレート嚢胞
チョコレートのうほう
Chocolate cyst
(女性の病気と妊娠・出産)
どんな病気か
卵巣に病巣を形成した子宮内膜症が進むと、卵巣内に嚢胞を形成します。この嚢胞内に主として月経の時に出血を繰り返すことにより、内腔に古い血液がたまったものが子宮内膜症性卵巣嚢胞、すなわち、チョコレート嚢胞です。エストロゲンに依存する疾患であるため、初経から閉経までの生殖可能年齢の女性に発症します。
原因は何か
卵管を通って腹腔内に逆流した月経血のなかの子宮内膜が腹膜に生着する、もしくは、腹膜が何らかの原因により子宮内膜に似た組織に変化することなどが考えられていますが、確定したものはありません。
症状の現れ方
症状としては月経痛、慢性骨盤痛、性交痛などの疼痛があるほか、不妊症の原因にもなります。まれですが、破裂した場合は激痛を伴います。また、卵巣がんが発生することもあります。
検査と診断
診断のために直腸診、婦人科的内診を行います。
画像診断では、下腹部に内腔に血液状の内容物を含む嚢胞が認められます。嚢胞は右または左の片側にできた単房性(嚢胞がひとつ)のものから、両側にできるもの、多房性のものまでさまざまです。CA125、CA199の値は軽度に上昇していることが多いようです。
治療の方法
手術療法または薬物療法を行います。小さなものに対しては、低用量ピル、ダナゾール(ボンゾール)、GnRHアナログ、ジエノゲスト(ディナゲスト)といったホルモン療法だけで有効なこともありますが、一定の大きさ(直径5㎝程度)以上のものでは手術療法が必要です。薬物療法は薬によって特有の副作用を伴うことが多いので、使用前に十分に副作用の説明を受けておくことが大切です。
手術療法には、開腹手術と腹腔鏡手術(おなかに小さな
病気に気づいたらどうする
本疾患にあてはまる症状がある場合には、産婦人科を受診することが望まれます。
大須賀 穣
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報