秋吉台(読み)あきよしだい

精選版 日本国語大辞典 「秋吉台」の意味・読み・例文・類語

あきよしだい【秋吉台】

山口県美祢(みね)郡秋芳(しゅうほう)町を中心とする石灰岩台地。一部は国定公園

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デジタル大辞泉 「秋吉台」の意味・読み・例文・類語

あきよし‐だい【秋吉台】

山口県西部にある石灰岩台地。狭義には秋吉台国定公園の地域をさす。秋芳洞あきよしどう大正洞などの鍾乳洞しょうにゅうどうがあり、日本最大のカルスト地形鍾乳洞内の地下水系は、平成17年(2005)ラムサール条約に登録された。

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日本歴史地名大系 「秋吉台」の解説

秋吉台
あきよしだい

美祢郡美東みとう町・秋芳しゆうほう町および美祢市の一市二町にまたがり、面積一三〇平方キロ余。北東部の美東町赤の猪出あかのいので台から南西伊佐いさ(現美祢市)まで一七キロ。北西から南東に七・五キロのほぼ平行四辺形をなすカルスト台地で、標高二五〇―四五〇メートル。中央を南流する厚東ことう川で二分され、東側が狭義のいわゆる秋吉台で、そのうち四千三三〇ヘクタールが国定公園に指定。とくにカルスト地形の顕著な地域一千三八四ヘクタールが特別天然記念物に指定されている。

東の台地は俗に奥秋吉台とよばれ、北から猪出台・佐山さやま台・真名まなだけ台・八久保はちくぼ台・地獄じごく台・長登ながのぼり台に分れ、その間に佐山ポリエ植山うえやまポリエ・帰り水かえりみず谷・三角原さんかくばらウバーレ長者ちようじや森平もりびら景清かげきよ洞・大正たいしよう洞が存在する典型的なカルスト地形の地域である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「秋吉台」の意味・わかりやすい解説

秋吉台
あきよしだい

山口県西部、美祢(みね)市にある日本最大の石灰岩台地。面積は約130平方キロメートルに及ぶ。特異なカルスト地形の発達によって、学術上、観光上広く知られ、その主要部は秋吉台国定公園となっている。また、秋吉台地下水系は2005年(平成17)に、ラムサール条約登録湿地となった。

 厚東(ことう)川によって二分され、その東部が狭義の秋吉台で、秋芳洞(あきよしどう)(特別天然記念物)や地獄台がある。秋吉石灰岩は、灰白色で割れ目の多い緻密(ちみつ)な岩質で、多種類のフズリナサンゴなどの化石を含み、古生代石炭紀、ペルム紀(二畳紀)の示準化石として知られる。秋吉台は秋吉造山運動とよばれる複雑な地殻変動を解明する重要な研究地となっている。台面の高度は200~400メートル、小起伏の高原となり、無数のドリーネとよばれる凹地が発達しており、地獄台や剣山(つるぎやま)のように広く石灰岩柱が裸出してカレンフェルトとよばれる特異な景観を示す所もある。台上は毎年春先に行われる山焼きによって広く草原となり一部は牧場や果樹園に利用される。台麓(だいろく)には多くの湧泉(ゆうせん)や湧水洞があって台地周辺の水田の灌漑(かんがい)用水源となり、マスの養殖にも利用。厚東川より西の台地では石灰石の採掘が行われ、採掘場には宇部興産(現、UBE三菱セメント)などの工場がある。大理石は全国一の生産をあげる。東海道・山陽新幹線新山口駅などからバスが通じる。

[三浦 肇]


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改訂新版 世界大百科事典 「秋吉台」の意味・わかりやすい解説

秋吉台 (あきよしだい)

山口県西部,美祢(みね)市にある日本最大の石灰岩台地。面積約130km2。急斜面で囲まれた台地は標高200~400mのゆるやかな高原状の地形をなし,厚東(ことう)川が中央を二分して南流している。その東部が狭義の秋吉台で国定公園となり,その主要部が1964年特別天然記念物に指定された。秋吉石灰岩は古生代石炭紀~二畳紀に形成されたサンゴ礁の堆積物からなり,フズリナやサンゴ,腕足類,ウミユリなどの化石を豊富に産し,とくにアキヨシエラと呼ばれるものをはじめ120種以上ものフズリナが発見されており,古生代の示準化石として有名である。大正末年秋吉台における地層の逆転構造の発見以来,日本列島の複雑な地殻変動を解明する重要な学術研究地として注目されている。石灰岩地では雨水や地下水の溶解作用によって特有のカルスト地形が発達する。秋吉台上には河流がなく,これにかわって地下水系が発達し,秋芳(あきよし)洞(特天)・大正洞(天)・景清穴(天)・中尾洞(天)などの大鍾乳洞を発達させるほか,200以上にも及ぶ大小の洞窟があり,台麓には地下水の出口である湧泉が数多く分布する。一方,台地面はドリーネやウバーレと呼ばれる凹地群が発達し,場所によってはカレンフェルトと呼ぶ石灰岩の岩柱群が露出して特異な景観を展開している。最も早く天然記念物に指定(1961)された地獄台はこうしたカルスト景観の代表地である。台面の大部分は毎年3月に行われる山焼きによって一面の草原となり,植物はネザサ,ススキが最も多く,ヤマハギ,チガヤ,ワラビなどが四季それぞれの自然の美を見せる。近年,台面の一部は牧場や果樹園として開かれ,古くから耕作されたドリーネ底の丸畑は少なくなった。秋吉台をとりまく平野は石灰岩地特有のポリエといわれる低地で,水に恵まれた水田地帯となっているが,台麓には湧泉とともに吸込穴も多く,涸れ川となるところもあり,はんらん時に一時的に湖水となったり,陥没ドリーネが生じたりという,カルスト地域特有の現象が発生する。

 秋吉台石灰岩地方の産業としては,古くから長登(ながのぼり)銅山が知られ,また寒水石(大理石)の採掘や石薬としての鍾乳石の採集,石灰の製造も旧藩時代から行われていた。現在では建築用・配電板用の大理石の生産は全国一の地位を占め,西秋吉台を中心に石灰石を原料とするセメント製造の大工場がある。こうした特異な自然と産業をもつ秋吉台には四季を通じてのすぐれた行楽地・学術的観光地として多くの観光客が訪れている。台上には国民宿舎や科学博物館,青少年宿泊訓練所,少年自然の家などの施設があり,南麓の広谷から台上を横断して北東麓の大正洞に至る有料道路(1990年無料開放)も通じ,小郡(おごおり),湯田温泉(山口市)からのバスの便も良い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「秋吉台」の意味・わかりやすい解説

秋吉台
あきよしだい

山口県中西部の内陸にある石灰岩台地。美祢市に属する。日本で最も大規模なカルスト地形が発達し,学術上,観光上有名。標高約 200~400mの波状の台地をなし,その中央を厚東川(ことうがわ)が南流し東西の地域に区分。東側が狭義の秋吉台で,1955年秋吉台国定公園に指定。主要部は 1964年国の特別天然記念物に指定された。2005年秋吉台地下水系がラムサール条約に登録。秋吉台には古生代ペルム紀石炭紀の地層が厚さ 500mほど堆積。石灰岩層は逆転構造を示し,フズリナのような示準化石や,大理石のような接触鉱床が豊富。秋芳洞などの鍾乳洞(→石灰洞),ドリーネウバーレポリエカレンフェルトなどの石灰岩地域特有のカルスト地形を形成。珍しい洞窟動物や冬の山焼きなどがみられる。秋吉台科学博物館,展望台などの施設がある。

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事典・日本の観光資源 「秋吉台」の解説

秋吉台

(山口県美祢郡美東町・秋芳町)
日本三大カルスト」指定の観光名所。

秋吉台

(山口県美祢郡美東町・秋芳町)
日本百景」指定の観光名所。

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世界大百科事典(旧版)内の秋吉台の言及

【カルスト地形】より

…これらのドリーネは,しばしばある方向に並んで分布し,地層の傾きや節理,断層系など地質構造の影響を表すことが多い。山口県の秋吉台は,約130km2にわたって古生代の石灰岩が分布する日本最大のカルスト地域であるが,ここではドリーネ景観がよく発達し,もっとも多いところでは,1km2当り120~140個のドリーネが数えられる。アメリカ合衆国のインディアナ州オレンジ地方の石灰岩地では,1km2当り400個のドリーネ密度をもつところがある。…

※「秋吉台」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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