改訂新版 世界大百科事典 「デポルト」の意味・わかりやすい解説
デポルト
Philippe Desportes
生没年:1546-1606
フランスの詩人。シャルトルの富裕なブルジョア家庭に生まれ,ラテン語,ギリシア語などを学んだ。若くして僧籍に入る一方,アンリ3世の宮廷に仕え,王の秘書兼雇われ詩人として出世した。16世紀後半,宮廷のイタリア化に伴い,詩壇では当時イタリアで流行していたネオ・ペトラルキスムがフランスに流行したが,デポルトはその主導者であった。やさしい,優雅な言葉遣いで,しかもしゃれた,少し持って回った表現で,恋人の美しさ,つれなさ,そして詩人の慕う心を歌った。ロンサールの後継者として詩壇に重きをなしたが,アンリ4世の時代,マレルブから痛烈な批判を受けた。それでも古典派の人たちからは,ロンサールのような大胆な用語,詩法を避け,温和な詩句を作り,古典派への道を開いた詩人として評価された。代表作に,〈ディアーヌへの恋〉〈イポリットへの恋〉などを含む《初期詩編》(1573),また《ダビデ詩編》の仏訳(1603)がある。
→宮廷文学
執筆者:福井 芳男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報