デポルト(英語表記)Philippe Desportes

改訂新版 世界大百科事典 「デポルト」の意味・わかりやすい解説

デポルト
Philippe Desportes
生没年:1546-1606

フランスの詩人シャルトルの富裕なブルジョア家庭に生まれ,ラテン語ギリシア語などを学んだ。若くして僧籍に入る一方,アンリ3世の宮廷仕え,王の秘書兼雇われ詩人として出世した。16世紀後半,宮廷のイタリア化に伴い,詩壇では当時イタリアで流行していたネオ・ペトラルキスムがフランスに流行したが,デポルトはその主導者であった。やさしい,優雅な言葉遣いで,しかもしゃれた,少し持って回った表現で,恋人の美しさ,つれなさ,そして詩人の慕う心を歌った。ロンサールの後継者として詩壇に重きをなしたが,アンリ4世の時代,マレルブから痛烈な批判を受けた。それでも古典派の人たちからは,ロンサールのような大胆な用語,詩法を避け,温和な詩句を作り,古典派への道を開いた詩人として評価された。代表作に,〈ディアーヌへの恋〉〈イポリットへの恋〉などを含む《初期詩編》(1573),また《ダビデ詩編》の仏訳(1603)がある。
宮廷文学
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デポルト」の意味・わかりやすい解説

デポルト
Desportes, Alexandre-François

[生]1661.2.24. シャンピニュール
[没]1743.4.20. パリ
フランスの画家。パリでフランドルの動物画家 B.ニカシウスおよび J.トロアに学ぶ。 1695~96年ポーランド宮廷に滞在,ヤン3世ソビエスキの肖像を描き,帰国後ルイ 14世,15世の宮廷画家として,『獲物の番をする猟犬』 (ルーブル美術館) のような猟の獲物を配した動物画や静物画を描いた。 99年アカデミー会員。 1712年ロンドンに行き非常な人気を博した。風景のエチュードバルビゾン派,印象派の外光派の風景画を予告している。ゴブラン織下絵も描いた。

デポルト
Desportes, Philippe

[生]1546. シャルトル
[没]1606.10.5. ノルマンディー,ボンポール
フランスの詩人。古典の教育を受け,早くから大貴族に仕え,特にアンリ・ダンジュー (のちの国王アンリ3世) ,アンリ4世の愛顧を受けた。ロンサールを師と仰ぎ,流麗な詩句,軽妙洒脱な調子が特徴。イタリア詩の影響を受けた『初期作品集』 Premières Œuvres (1573) は好評を博した。カトリックの立場からの聖書詩篇』の翻訳 (91~1603) は C.マロの訳とは対照的である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「デポルト」の意味・わかりやすい解説

デポルト
でぽると
Philippe Desportes
(1546―1606)

フランスの詩人。シャルトルに生まれる。宮廷詩人としてアンリ3世に寵愛(ちょうあい)される。イタリアのネオ・ペトラルキスムの影響を受けた軽妙流麗な詩風でロンサールの人気を奪い、マレルブの登場まで当代随一の詩人として名声を博し、『初期詩集』Les premières œuvres(1573)はたびたび版を重ねる。彼はプレイアード派から古典主義への橋渡しとして、彼以前の詩の様式を消化し17世紀へ伝えたといえる。晩年はノルマンディーのボンポールの修道院に隠棲(いんせい)し、もっぱら宗教詩と『詩篇(プソーム)』の翻訳に従事した。

[髙橋由美子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

スキマバイト

働き手が自分の働きたい時間に合わせて短時間・単発の仕事に就くこと。「スポットワーク」とも呼ばれる。単発の仕事を請け負う働き方「ギグワーク」のうち、雇用契約を結んで働く形態を指す場合が多い。働き手と企...

スキマバイトの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android