トゥルシーダース(読み)とぅるしーだーす(英語表記)Gōswāmī Tulsīdās

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トゥルシーダース」の意味・わかりやすい解説

トゥルシーダース
とぅるしーだーす
Gōswāmī Tulsīdās
(1532ころ―1623ころ)

インドのブラジバーカーおよびアワディー語詩人。熱烈なラーマ信徒。幼時乞食(こじき)の苦労をしたが寺院に保護され、教養を積む。家庭をもったが、家を捨て遊行者(ゆぎょうしゃ)となる。詩才に富み自由詩、小詩、叙事詩に才筆を振るい、12の名編を残している。とくにブラジバーカー語によるラーマの物語とラーマ信仰詩集『カビターワリー』(詩歌集)、ラーマの物語に関する歌集『ギーターワリー』(歌謡集)、神々の賛歌とそれらの神々に対する懇願の歌集『ビナエパトリカー』(懇願詩集)がとくに名声を博している。しかし彼の名を不朽にしたものは、アワディー語で書かれたラーマ信仰の叙事詩『ラーム・チャリット・マーナス』(ラーマの行動の湖)である。

[土井久弥 2018年5月21日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トゥルシーダース」の意味・わかりやすい解説

トゥルシーダース
Tulsīdās

[生]1523/1543
[没]1623?
インド,ヒンディー語の聖詩人。北インドのバクティ運動の中心人物でラーマ信仰の唱道者ラーマーナンダの系統をひき,ラーマへの熱烈な信愛をもとにして『ラーマーヤナ』を翻案した『ラームチャリットマーナス (ラーマの行跡の湖) 』 Rāmcaritmānasは今日でも愛唱されている。『トゥルシー・ラーマーヤン』 TulsīRāmāyaṇとも呼ばれるこの書は,ラーマの生地といわれるアヨーディヤーで起稿,ワーラーナシ脱稿,7編約1万頌から成っている。ほかに『ビナエ・パトリカー』 Vinay Patrikā,『カビターワリー』 Kavitāvalīなどの作品がある。

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