トマジウス(その他表記)Christian

翻訳|Christian

大学事典 「トマジウス」の解説

トマジウス
Christian

ドイツ啓蒙主義の父と呼ばれる法学者。ライプツィヒに生まれ,フランクフルト・アン・デア・オーデルで教育を受けた後に,市民法と教会法の両法博士となった。故郷で弁護士をした後,ライプツィヒ大学(ドイツ)の私講師となった。1687年にドイツ語での講義予告をおこなったため,後に教授執筆活動が禁止され,やがて免職処分となった。神学と古典語に重点を置くスコラ的大学教育の伝統に対する一種の近代化の試みであった。ブランデンブルク選帝侯フリードリヒ3世の依頼によって,ハレ大学(現,ハレ・ヴィッテンベルク大学(ドイツ))創設に参画し,そこではドイツ語での講義をおこなった。個々人自身の洞察に基づく認識を最大限に尊重する立場から,18世紀のドイツ大学に探求する自由(libertas philosophandi)を根付かせた貢献は大きい。哲学者のクリスティアン・ヴォルフもハレ大学に移り,ドイツ語で哲学などを講義する用語集を作成した。これらはいずれも伝統的にラテン語を使用してきた大学における教育言語の母国語化の先駆的事例である。
著者: 児玉善仁

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改訂新版 世界大百科事典 「トマジウス」の意味・わかりやすい解説

トマジウス
Christian Thomasius
生没年:1655-1728

ドイツの法学者,哲学者。ドイツ啓蒙思想の先駆者の一人。哲学史家ヤーコプ・トマジウスの子としてライプチヒに生まれた。1681年よりライプチヒ大学講師となり,初めてドイツ語で講義した。しかしその革新的見解が攻撃されて,90年ハレに移り,ブランデンブルク選帝侯の保護をうけ,ハレ大学創設に尽力,同大学の法学部教授となる。学問の神学からの独立主張し,神法の法的性格を否定,また道徳内面を拘束するが,法は外面を拘束するのみだとして,権力の内面への介入を否定した。また拷問や異端迫害を批判し,自己の主張をドイツ語の雑誌で世に訴えるなど,ドイツ・ジャーナリズムの先駆的役割を果たした。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トマジウス」の意味・わかりやすい解説

トマジウス
Thomasius, Christian

[生]1655.1.1. ライプチヒ
[没]1728.9.23. ハレ
ドイツの哲学者,法学者。 1672年 17歳で哲学のマギステル Magister (学士) となった。 75年以降フランクフルトアムオーデルで法律を研究,79年学位を得,法律家として活躍。 84~90年の間ライプチヒ大学の教授となり,この間 87年に初めてドイツ語で講義を行なった。 94年ハレ大学の創設に尽力,98年以後没するまで同大学法学教授。哲学,法律のほか物理学,数学,歴史を研究した。ドイツ啓蒙主義の先駆者の一人で,法律学では自然法を主張し,また自然科学思想の普及にも貢献した。主著"Fundamenta juris naturae et gentium" (1705) 。

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百科事典マイペディア 「トマジウス」の意味・わかりやすい解説

トマジウス

ドイツの哲学者,法学者。ドイツ啓蒙思想の先駆者。大学での講義に初めてドイツ語を使用。またドイツ語を哲学の術語に導入してその通俗化に尽力した。学問の神学からの独立,反異端審問の主張も有名。

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世界大百科事典(旧版)内のトマジウスの言及

【啓蒙思想】より

…領邦の分立,大土地所有貴族の強固な支配権の残存などのために,英仏両国にたいしてさらに市民社会の形成におくれをとったドイツは,フリードリヒ大王のいわゆる〈上からの啓蒙〉という変則的な形で近代国家の形成に向かわなければならなかった。ライプニッツの哲学を体系化したウォルフ,またウォルフの師でドイツ語をラテン語にかえて学術用語として採用する先駆となったトマジウスなどの大学教師がここでは比較的主導的な役割を演じたが,それらの思想内容はフランスのものほどに過激ではない。ただし,ドイツでは,近代市民社会の未成熟という条件をいわば逆手にとって,思想の展開の時間だけをひとり促成栽培的に早めるといった現象が18世紀末から19世紀はじめにかけて見られる。…

※「トマジウス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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