トムセン(読み)とむせん(その他表記)Vilhelm Ludvig Peter Thomsen

精選版 日本国語大辞典 「トムセン」の意味・読み・例文・類語

トムセン

  1. [ 一 ] ( Christian Jürgensen Thomsen クリスチャン=ユルゲンセン━ ) デンマーク考古学者。先史考古学の祖。先史時代石器青銅器鉄器の各時代に区分した。(一七八八‐一八六五
  2. [ 二 ] ( Hans Peter Jφrgen Julius Thomsen ハンス=ペーター=イェルゲン=ユリウス━ ) デンマークの化学者。化学変化の際の反応熱、燃焼熱の研究を行ない、熱化学の基礎を築いた。(一八二六‐一九〇九
  3. [ 三 ] ( Vilhelm Ludvig Peter Thomsen ビルヘルム=ルドウィヒ=ペーター━ ) デンマークの言語学者。シベリアで発見されたオルホン碑文突厥文字)を解読、最古のチュルク語の資料を紹介した。また、主著「言語学史」で一九世紀の言語学の発展をまとめた。(一八四二‐一九二七

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トムセン」の意味・わかりやすい解説

トムセン(Vilhelm Ludvig Peter Thomsen)
とむせん
Vilhelm Ludvig Peter Thomsen
(1842―1927)

デンマークの言語学者。R・ラスクの流れをくむ北欧の代表的言語学者で、イェスペルセンやペデルセンHolger Pedersen(1867―1953)の師にあたる。古期トルコ語のオルホン碑文の解読によってもっとも有名であるが(Inscriptions de l'Orkhon déchiffrée, 1896)、古代小アジアのリュキア語の解読にも貢献した。ほかに『フィン諸語とバルト諸語の交渉』Berøringer mellen de finske og de baltiske sprogs(1890)、『古代ロシアとスカンジナビアの交渉およびロシア帝国の起源』The Relations between Russia and Scandinavia and the Origin of the Russian State(1876)など、論文・著書はおよそ200点に上る(『全集』全4巻、1919~1933)。なお、1902年に出た小著『言語学史』Sprogvidenskabens historie, En kortfattet fremstilling af dens hovedpunkterは邦訳がある。

[松本克己 2018年7月20日]

『泉井久之助・高谷信一訳『言語学史』(1967・清水弘文堂書房/複製・1998・ゆまに書房)』


トムセン(Hans Peter Jörgen Julius Thomsen)
とむせん
Hans Peter Jörgen Julius Thomsen
(1826―1909)

デンマークの化学者。高校を卒業しなかったが、試験を受けて理工科学校に入学し、卒業後同校の化学実験助手となり、のちにはコペンハーゲン大学の化学教授となった。彼のおもな研究は熱化学で、3500回も反応熱の測定を行い、詳しいデータを積み上げた(おもに1866~1886)。彼が出発点とした考えは、「化学反応で発生する熱量は、化学親和力に相当する」というものであるが、彼自身のちに認めたように、これはかならずしも正しくなく、結局彼の熱化学は行き詰まった。ほかの研究としては、1895年に当時の周期律表をさらに改良した形のものを発表している。

[吉田 晃]


トムセン(Christian Jürgensen Thomsen)
とむせん
Christian Jürgensen Thomsen
(1788―1865)

デンマークの考古学者。1816年、コペンハーゲンの北方古物博物館長となり、博物館に収集されていた遠古の遺物の整理を行った。その際、異教時代を、遺物に基づいて石器時代、青銅器時代、鉄器時代の三時期に区分する方法を考案した。これが有名な三時代法Dreiperioden systemであり、その後の遺物による遠古史研究の発展に重要な基礎を与えた。

[南 博史]

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改訂新版 世界大百科事典 「トムセン」の意味・わかりやすい解説

トムセン
Christian Jürgensen Thomsen
生没年:1788-1865

デンマークの考古学者。船持ちの富裕な商人の長男として生まれ,家業のかたわら古銭学に造詣を深め,1816年古代文物保存協会の無給書記となり,42年同協会会長,49年には古代北欧博物館(デンマーク国立博物館の前身)館長となって,65年までその職にあった。美術部門を充実し,またP.F.vonシーボルトの助言をうけ,世界で初めて民族部門を創設するなど,博物館マンとしての功績は大きい。考古学者としては,石器時代・青銅器時代・鉄器時代の三時代区分法Dreiperiodensystemの提唱者として名高い。1818年ころからこの区分に従って遺物を展示していたが,この考案は36年,王立北欧古代学協会が発刊した小冊子《北欧古代学入門》で初めて公にされた。翌年にはドイツ語版も刊行され,ヨーロッパの学界に賛否両論,あるいはその先唱者をめぐる論争を招いた。なおこの書物の内容はきわめて啓蒙的で,文化財保護の必要性を強く訴え,遺跡・遺物を見いだした際の処置,北欧のおもな博物館を列挙して結んでいる。またトムセンは,しばしば博物館の展示室で一般見学者に話しかけ,説明をかってでるなど,博物館の社会教育的役割を自ら実践した。
執筆者:


トムセン
Vilhelm Ludvig Peter Thomsen
生没年:1842-1927

デンマークの言語学者,言語史家。コペンハーゲン大学教授。青年文法学派に属し,インド・ヨーロッパ(印欧)語はじめ多くの言語についての200以上の労作がある。印欧語については,ロマンス語の音韻史,ゲルマン語とバルト語との関係,ゲルマン語およびバルト語とフィン語との関係についての論文がある。1893年,シベリアのオルホン川,エニセイ川両河岸で発見された碑文を解読し,最古(8世紀)のチュルク語(チュルク諸語)資料を提供した業績は世界言語学史上に輝くもので,日本の東洋史家の間に古くから知られている(1894年刊《オルホンおよびエニセイの碑文の解読》,1896年刊《解読されたオルホン碑文》)。のち,ヒンディー語,サンターリー語を研究した。デンマーク語方言辞典およびスウェーデン語辞典の編集にも参画した。大学の講義をまとめて出版した《19世紀末までの言語学史》(第2版,1902)は日本でも翻訳・紹介されている。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トムセン」の意味・わかりやすい解説

トムセン
Thomsen, Vilhelm Ludvig Peter

[生]1842.1.25. コペンハーゲン
[没]1927.3.12. コペンハーゲン
デンマークの言語学者。コペンハーゲン大学比較言語学教授。オルホン碑文の解読で知られ,『解読されたオルホン碑文』 Inscriptions de l'Orkhon déchiffrées (1896) の著書がある。ほかに,ゲルマン語派のフィン諸語への影響を扱った研究 (1869) や,フィン諸語とバルト語派との交渉を扱った研究 (93) がある。 19世紀までの言語学の流れを述べた『言語学史』 Sprogvidenskabens Historie (1902) は日本語にも訳され (37) ,言語学史の古典となっている。

トムセン
Thomsen, Christian Jürgensen

[生]1788.12.29. コペンハーゲン
[没]1865.5.21. コペンハーゲン
デンマークの考古学者。富裕な商人の子として生れ,父の跡を継いだが,古銭収集から有史以前の時代に興味をもちはじめた。 1816年コペンハーゲン王立博物館館長に就任,博物館の遺物を整理する際,石器,青銅器,鉄器の三時期法を提唱した。その説は『北方古代文化入門』 Legetraad til nordisk Oldkyndighed (1836) に記述された。

トムセン
Thomsen, (Hans Peter Jörgen) Julius

[生]1826.2.16. コペンハーゲン
[没]1909.2.13. コペンハーゲン
デンマークの化学者。コペンハーゲン大学教授 (1866~91) 。化学反応における発熱,吸熱量の精密測定を行い,のちに「トムセン=ベルトロの原理」と呼ばれる熱化学の基礎を築いたほか,C.グルベル,P.ウォーゲの質量作用の法則の確証にも貢献した。主著『熱化学研究』 Thermochemische Untersuchungen (4巻,82~86) 。

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百科事典マイペディア 「トムセン」の意味・わかりやすい解説

トムセン

デンマークの考古学者。1816年北方古代博物館長となり,同館収集の遺物を整理するために三時代区分法を考案し,1836年著書《北欧古代学入門》に発表,先史文化研究に学術的基礎を与えた。
→関連項目石器時代

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旺文社世界史事典 三訂版 「トムセン」の解説

トムセン
Christian Jürgensen Thomsem

1788〜1865
デンマークの考古学者・博物学者
古銭研究から考古学に興味をもち,先史時代の遺物を整理するため,石器時代・青銅器時代・鉄器時代の三期区分法を初めて唱えた。

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367日誕生日大事典 「トムセン」の解説

トムセン

生年月日:1842年1月25日
デンマークの言語学者
1927年没

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世界大百科事典(旧版)内のトムセンの言及

【考古学】より

…考古学のもう一つの萌芽はヨーロッパ先史時代の研究である。1820年ころ,C.J.トムセンはコペンハーゲンの国立博物館の収集品を,石器時代,青銅器時代,鉄器時代という三時期区分法によって分類展示し,混沌としていた先史遺物の理解に初めて一つの秩序を与えた。これ以後,先史考古学は自然科学から多くのヒントを得ながら自己の方法を形成してゆく。…

【青銅器時代】より

…青銅器時代の用語で示される文化はさまざまであっても,実態がどれほど違うのか比較の議論が可能なのも,青銅器時代が分類体系として存在しているからである。
[ヨーロッパ,オリエント]
 19世紀の前半,デンマークのC.J.トムセンは石,青銅,鉄でできた斧や剣などの利器が,それぞれ違った構造の墓から出土する事実に注目し,青銅製利器の使われた時代を青銅器時代と呼んだ。鉄器はガラス器を伴うので,青銅器時代よりも新しく,石器は青銅器よりも古く遠古の昔の産物と考えた。…

【石器時代】より

…考古学の時代区分。デンマークの王立古文献協会が1836年に刊行した《北欧古代学入門》で,トムセンが人類文化を石器時代,青銅器時代,鉄器時代の3時代に区分し,この順の発達を説いたことに基づく。トムセンの定義によると石器時代は,〈武器と道具が,石や木,骨などで作られ,金属はほとんど使われていないか,あるいは全然使われていない時代〉である。…

※「トムセン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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