日本大百科全書(ニッポニカ) 「トムセン」の意味・わかりやすい解説
トムセン(Vilhelm Ludvig Peter Thomsen)
とむせん
Vilhelm Ludvig Peter Thomsen
(1842―1927)
デンマークの言語学者。R・ラスクの流れをくむ北欧の代表的言語学者で、イェスペルセンやペデルセンHolger Pedersen(1867―1953)の師にあたる。古期トルコ語のオルホン碑文の解読によってもっとも有名であるが(Inscriptions de l'Orkhon déchiffrée, 1896)、古代小アジアのリュキア語の解読にも貢献した。ほかに『フィン諸語とバルト諸語の交渉』Berøringer mellen de finske og de baltiske sprogs(1890)、『古代ロシアとスカンジナビアの交渉およびロシア帝国の起源』The Relations between Russia and Scandinavia and the Origin of the Russian State(1876)など、論文・著書はおよそ200点に上る(『全集』全4巻、1919~1933)。なお、1902年に出た小著『言語学史』Sprogvidenskabens historie, En kortfattet fremstilling af dens hovedpunkterは邦訳がある。
[松本克己 2018年7月20日]
『泉井久之助・高谷信一訳『言語学史』(1967・清水弘文堂書房/複製・1998・ゆまに書房)』
トムセン(Hans Peter Jörgen Julius Thomsen)
とむせん
Hans Peter Jörgen Julius Thomsen
(1826―1909)
デンマークの化学者。高校を卒業しなかったが、試験を受けて理工科学校に入学し、卒業後同校の化学実験助手となり、のちにはコペンハーゲン大学の化学教授となった。彼のおもな研究は熱化学で、3500回も反応熱の測定を行い、詳しいデータを積み上げた(おもに1866~1886)。彼が出発点とした考えは、「化学反応で発生する熱量は、化学親和力に相当する」というものであるが、彼自身のちに認めたように、これはかならずしも正しくなく、結局彼の熱化学は行き詰まった。ほかの研究としては、1895年に当時の周期律表をさらに改良した形のものを発表している。
[吉田 晃]