ハイイロガン(その他表記)Anser anser; greylag goose

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハイイロガン」の意味・わかりやすい解説

ハイイロガン
Anser anser; greylag goose

カモ目カモ科。全長 74~91cmの大型のガンで,ヨーロッパ北アメリカで飼われているガチョウ原種羽色は全体に灰褐色で,頭部が濃く,胸から腹が淡く,脇から腹には淡褐色横縞が密に入る。体の背面は羽毛の縁が白っぽく,うろこ模様になる。尾羽の中央は褐色だが,周囲や下尾筒が白い。と脚は肉色がかった桃色。ヨーロッパからユーラシア大陸中央部を横切り,シベリア南部,東アジア北部にかけて繁殖するが,ヨーロッパでは繁殖分布が不連続に分散している。巣はアシなど水辺の草の間に草を敷いてつくる。繁殖を終えると,ヨーロッパ南部や北アフリカに分散して,また中東からインド北部を経て中国南部,東部にまで渡って越冬する。オーストラリア南部の東西では移入された鳥が野生化している。日本には冬鳥または旅鳥(→渡り鳥)としてごくまれに渡来し,内湾,沼,湖などにすむ。草食水草や陸上の草の根から芽,葉,種子,果実などを食べる。(→ガンカモ類

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改訂新版 世界大百科事典 「ハイイロガン」の意味・わかりやすい解説

ハイイロガン (灰色雁)
greylag goose
Anser anser

カモ目カモ科の鳥。ユーラシア大陸の中緯度地方で繁殖し,冬季にはヨーロッパおよびアジアの南部に渡る。ヨーロッパではかつてほぼ全土で繁殖していたが,現在は北と東ヨーロッパにだけ繁殖している。日本にはごくまれに冬鳥として渡来する。湖沼湿地にすむ。全長約84cm。体は全体に灰褐色で,とくに頭頸(とうけい)部は灰色みが強い。下面は淡色である。くちばしはアジアの亜種では桃肉色だが,ヨーロッパの亜種では橙赤色をしている。脚はピンク。翼を広げたとき,雨覆羽は日本に渡来する他のどのガンよりも灰白色みが強いので,容易に他種と識別できる。食物はおもに草木類の種子や葉で,歯のようになっている縁をもったくちばしでかみ切って食べる。湿地や草むらの中の地上に枯茎や小枝を集めて巣をつくり,産座には多量の羽毛を敷き,1腹4~8個の卵を産む。抱卵期間は約28日。家禽かきん)のガチョウはヨーロッパと中国でつくられ,ヨーロッパでは本種を,中国ではサカツラガンを改良したものと考えられている。そのためヨーロッパではハイイロガンをwild gooseとも呼ぶ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハイイロガン」の意味・わかりやすい解説

ハイイロガン
はいいろがん / 灰色雁
graylag goose
[学] Anser anser

鳥綱カモ目カモ科の鳥。中央ヨーロッパから南シベリアの東部までに分布する代表的な大形ガンであるが、日本にはまれに迷鳥が渡来するにすぎない。全長80センチメートル。嘴(くちばし)と足は、ヨーロッパ産は橙(だいだい)色、南シベリア産はピンクを帯び、体はほかのガン類より灰色である。本種はヨーロッパで家禽(かきん)化されてガチョウとなり、トゥールーズ、エムデンなど重量・肉用品種が作出され、また、肝臓が高価なフォアグラとして珍重される。

[黒田長久]


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世界大百科事典(旧版)内のハイイロガンの言及

【ガチョウ(鵞鳥)】より

…ガンカモ目に属する家禽(かきん)で,ヨーロッパ系のものAnser anserと中国系のものA.cygnoidesがある。前者はハイイロガンをエジプトで前2800年ころに家禽化したもので,主要品種としてはエムデン種Embden(ドイツ原産,白色,体重8.0~9.0kg)(イラスト)やトゥールーズ種Toulouse(フランス原産,灰褐色,体重9.0~12.0kg)(イラスト)がある。…

※「ハイイロガン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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