日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハクガン」の意味・わかりやすい解説
ハクガン
はくがん / 白雁
snow goose
[学] Anser caerulescens
鳥綱カモ目カモ科の鳥。カナダの北極海諸島で繁殖し東海岸に渡る大形亜種と、シベリア側のウランゲル島で繁殖し、カリフォルニア内陸、ミシシッピ川沿いにメキシコ湾沿岸に渡る小形亜種がある。かつて日本にも多く渡来したというが、明治時代ごろからすでに少なく、ウランゲル島のものと思われる1、2羽が迷ってくるにすぎない。密集営巣性で巣縄張りは23平方メートルほどにすぎず、ウランゲル島では1960年に10万もの巣が密集していた。越冬地のミシシッピ川下流でも雪のように密集して大群をなし、1955~74年の20年間の調査で平均1300万羽が数えられた。全長約70センチメートル。全身白色で初列風切(かざきり)のみ黒色、嘴(くちばし)と足はピンクがかった暗赤色をしている。頭頸(とうけい)部のみ白い青色型、および中間羽色の変異がある。
小形の別種ヒメハクガンA. rossiがハクガンとは独立した繁殖地に個体群を維持し、カリフォルニアに渡る。
[黒田長久]