仮名草子。如儡子(じよらいし)作。5巻。1636年(寛永13)成立。42年刊。《徒然草》にならって,約280条400項にわたり〈むかしさる人のいへるは〉の書出しで短文を収めた随筆集である。内容は文武儒仏,政治世俗,道徳宗教,故事見聞,笑話戯歌(ざれうた),自分の経験など多方面に及ぶが,特に小人(しようじん)がへつらいで出世し正義清廉の賢士が不遇であるという世相慨嘆や,武士道がすたれ,役人が腐敗するという批判的話題が多い。儒教主義に立脚し,かつ当時増加しつつあった不遇な浪人の心情からの世相批判でもある。〈可笑〉という題名は,批判と自嘲をあわせ含むともとれる。俗語を駆使した平易な文体で,身の処し方を説き,〈教訓草子の母〉とも称せられて版を重ね,59年(万治2)刊本は絵入りとなった。この書に続いて,《可笑記評判》(浅井了意)や《可笑記跡追(あとおい)》が生まれ,また影響を受けた後続作も多い。
執筆者:浮橋 康彦
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