イラクサ科ミズ属Pileaの草本植物で,熱帯~亜熱帯に約400種がある。なかには木本的な種もあるが,数種が鉢植えの観葉植物として温室で栽培される。アサバソウP.cadierei Gagnep.et Guill.はインドシナ半島原産で,先のとがった楕円形葉で,3本の葉脈が走り,脈間に銀白色の斑(ふ)が入る。葉面はしわが多く,先端部は鋸歯縁となる。葉が小さく,丈の低い矮性(わいせい)種にミニマcv.Minimaがある。日陰でもよく育ち,しかも強い日光にも耐える。寒さにも強く,5℃以上で越冬する。テラリウムなどにも向く。ピレア・クラッシフォリアP.crassifolia (Willd.) Bl.はジャマイカ原産で,一般にムーン・バレーcv.Moon Valleyと呼ばれる品種が栽培される。葉は長さ5~6cmの卵形で,ちりめん状の葉面は,萌黄(もえぎ)地に暗褐色の3本の葉脈が走る。つり鉢には,やはり西インド原産のピレア・ヌンムラリイフォリアP.nummulariifolia (Sw.) Wedd.がよい。この種は一般に,クリーピング・チャーリーcreeping Charlieの名で呼ばれる。南アメリカ原産のピレア・スプルケアナP.spruceana Wedd.cv.Norfolkも,つり鉢,テラリウムなどに向く。この仲間は生長が早いので,挿木でふやし,古株は早く更新するとよい。
執筆者:高林 成年
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
イラクサ科(APG分類:イラクサ科)ピレア属の総称。一年草または多年草で、まれに低木状をなす。熱帯から温帯に約400種分布する。アサバソウP. cadierei Gagnep. et Guillauminはベトナム原産の半低木状草本。葉は多汁質で光沢があり、銀白色の斑(ふ)がある。日照不足にもよく耐え、小形種もある。ヌンムラリイフォリアP. nummulariifolia (Sw.) Wedd.は中南米原産の匍匐(ほふく)性多年草で、クリーピング・チャーリーcreeping charlieともいう。よく分枝して長く伸びるので、吊(つ)り鉢に向く。モリス・ムーンバレーP. mollis Wedd. cv. Moon valleyはコスタリカ原産。葉は縮緬(ちりめん)状の卵形、黄緑色で暗褐色の葉脈がある。ほかにメキシコミズP. serpyllifolia (Poir.) Wedd.やコメバコケミズP. microphylla (L.) Liebm.が栽培される。ミニ観葉種として利用し、繁殖は挿木による。
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