改訂新版 世界大百科事典 「フッキソウ」の意味・わかりやすい解説
フッキソウ
Pachysandra terminalis Sieb.et Zucc.
山地のやや湿った樹林下に小群をつくるツゲ科の常緑低木。北海道から九州まで分布し,中国にも産す。茎は横走する地下茎から斜上し,緑色で高さ20~30cmとなる。葉は倒卵状へら形で,上縁に粗い牙歯がある。質は厚く,表は深緑色で光沢がある。葉の寿命は通常2年で,当年葉~2年葉が階をなし,毎年伸長した茎の上部に群がって互生する。花期は3~5月。長さ2~5cmの穂状花序が頂生し,花をつけると仮軸分枝する。花は単性で,花弁はなく,淡緑色の4枚の萼片がある。雄花は花序あたり約20個つき,白色の太い花糸の目だつ4本のおしべが突出する。属の学名Pachysandraは〈太いおしべ〉の意味である。雌花は花序の基部に5個内外つき,2本の花柱をもつめしべがある。果実は卵形で径1.5cm,熟すと白色となり,液質で核がある。和名の由来は明らかでないが,常緑の葉の茂るさまを,家の繁栄を祝うたとえとして富貴草と名づけられたとする牧野富太郎の説がある。別名,吉祥草(きちじようそう)。しばしば庭園に植栽され,斑入りの園芸品種がある。フッキソウ属は約5種が東アジアおよび北アメリカに不連続分布し,第三紀周北極植物群の遺存植物の一つと考えられる。
執筆者:森田 竜義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報