マルクス主義の用語。労働者階級が農民をはじめとする勤労人民を指導してブルジョア政治権力を打倒し,プロレタリアートの独裁によって,資本主義制度を一掃し,社会主義社会の建設をめざす革命である。革命の歴史的類型としてはブルジョア(民主主義)革命と対照せられる。またこれを社会主義革命と呼ぶことがあるが,プロレタリア革命という場合には革命の指導勢力に力点がおかれるのに対し(ただしプロレタリアートの指導する革命のすべてがプロレタリア革命になるわけではない。プロレタリアートの指導する革命としては,ほかに反帝・反封建の民主主義革命や反帝・反独占ないし反独占の民主主義革命も想定しうる),社会主義革命という場合には,革命の社会的内容が重視されているといえよう。成功した社会主義革命の歴史的事例としては,1917年のロシアの十月革命がまずあげられるが,第2次大戦後の一連の人民民主主義革命,キューバ革命(1963),ベトナム革命(1976)なども,このカテゴリーに入れることができる。たとえば第2次大戦後の東欧やアジア(中国,北朝鮮,ベトナム)における人民民主主義革命の場合,革命はソビエト権力と異なる人民共和国の形態をとった人民権力のもとで,おおむね民主主義革命の第1段階(反帝・反ファシズム,反独占または反封建等の民主主義的課題の実現)から社会主義革命(社会主義社会建設が主任務)の第2段階へと平和裡に2段階連続革命の過程をとおって発展したのである。キューバ革命の場合もほぼ同様であり,1959年初頭のカストロらによる政権奪取から反帝・反封建の革命が推し進められ,1961年のメーデーにあたり,カストロ首相によってソ連型社会主義国家建設が声明された。
(1)プロレタリア革命は,広範な人民諸階層と同盟を結んだプロレタリアートの権力の樹立によって始まる。この点はブルジョア革命との主要な違いの一つである。なぜなら,社会主義の生産関係は資本主義のなかから自然発生的に生まれることがなく,それはプロレタリア権力によって組織化される必要があるからである。(2)より具体的にいえば,プロレタリア権力は,大企業などの生産手段を社会的所有(さしあたっては国有)に移して社会主義的所有関係の基礎を固めると同時に,勤労農民や都市の小企業家・自営業者などの私的生産手段を社会的所有に移すよう指導するが,現存する社会主義諸国の歴史的経験に関するかぎり,とくに勤労農民の私的土地所有の社会的所有への転化(国営農場や協同組合農場の形態をとる)は,極度に困難な課題である。たとえばソビエト権力の場合には,実質的に上からの強制的な農業集団化政策を強行したが,そのことの悪影響は,いまなおソ連の農業生産力の相対的停滞という形で及んでいる。その他の現存社会主義諸国でも,農業集団化政策が成功裡にすすめられている例は少ない。(3)社会主義社会の建設は,なんらかの形態における経済の計画化をともなう。ソ連においては上からの行政的やり方による極度に中央集権主義的計画経済方式が採用された。この方式は,工業化の一定の段階では有効であったがマイナス面も大きかったため,1960年代の半ばから若干の手直しが行われたが(いわゆるリーベルマン方式による改革),十分に成果をあげているとはいいがたい(〈利潤論争〉の項参照)。他方,ユーゴスラビアでは1950年代の初頭から企業の労働者自主管理にもとづいて,国家計画機関の介入を最小とする〈市場社会主義〉型の実験が行われてきたが,そこではソ連型とは逆のマイナス面(企業間・産業間格差の増大,国民経済的統合の困難など)がみられる。現存する社会主義諸国では,ソ連型とユーゴ型の中間の方式を採用したハンガリーの計画化方式が相対的にもっとも成功していると評価されているが,いずれにしろそれぞれの国に適合的な計画化方式の模索は今後も続けられていくであろう。
これまでのところ,現実にプロレタリア革命を経て社会主義へ移行した国々は,資本主義の発展の度合が低い後進資本主義国か旧植民地・従属国であった。これらの諸国では社会主義化の課題が経済的近代化=工業化の課題と重なり合って進行したが,政治的民主主義化は不十分,不徹底であり,そのことが社会主義社会建設にとっての大きなネックとなっている。これに対して今日発達した資本主義諸国においては,たとえばユーロコミュニズムの潮流にみられるように,発達した経済的生産力,政治的民主主義,相対的に高い文化水準等に適合的な社会主義への移行の戦略,一言でいって〈社会主義への民主主義的道〉が模索されており,その成否は20世紀末から21世紀にかけての最大の政治的実験の一つとして注目されている。
→社会主義
執筆者:田口 富久治
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このことばは、19世紀から1920年代まで、ブルジョア革命と対比する形で、社会主義革命を意味する用語として使われた。社会主義革命は、労働者階級を意味するプロレタリアートによる革命であると理解されたので、1917年の十月革命後のロシアでも、その後の国際共産主義運動でも、プロレタリア革命ということばが盛んに使われた。しかしロシアの十月革命には兵士も参加しており、その大半は農民であったから、この革命はプロレタリアートだけによる革命ではなく、労働者と農民による革命の性格をもっていた。
プロレタリア革命という用語は1930年代以後しだいに使われなくなり、第二次世界大戦後はほとんど使われていない。それは第一に、プロレタリアートが伝統的に工場労働者を意味することばとして用いられてきたものだが、現代の社会主義革命は第三次産業部門の労働者や管理部門の職員などを含む広い意味での労働者階級による革命と考えられるからであり、第二に、現代の革命は労働者階級が中心の役割を果たすとはいえ、中間層も参加する革命であるという認識が一般化したからである。
[稲子恒夫]
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共産党政権を樹立して,社会主義の実現をめざす革命のこと。実現される社会に注目すれば,社会主義革命。ロシア革命,中国革命,キューバ革命がその例。
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