ベッティ(読み)べってぃ(英語表記)Ugo Betti

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベッティ」の意味・わかりやすい解説

ベッティ
べってぃ
Ugo Betti
(1892―1953)

イタリアの詩人劇作家。カメリーノに生まれる。大学は法科を卒業。第一次世界大戦の激戦地カポレットで捕虜となる。戦後は判事を務めるかたわら詩集『沈思の王』(1922)、短編集『カイン』(1928)を書く。寓話(ぐうわ)的・象徴的な主調にリアリスティックな筆致がさえる。本領戯曲で、1927年『女主人公』で劇文学賞を受賞、以後『鴨(かも)の猟人』(1940)、『監査』(1947)などを発表。舞台を法廷に見立てて現代人の罪や矛盾や悲劇性をえぐるが、大詰には救いがある。晩年には『牝山羊が島の犯罪』(1948)、『裁判所腐敗』(1949)を書き、性や権力をめぐる暗闘を描いた。『焼けた花壇』(1952)が遺作となった。

[花野秀男]

『赤沢寛訳『牝山羊が島の犯罪』(『世界文学大系95』所収・1965・筑摩書房)』『里居正美訳『裁判所の腐敗』(『現代世界演劇12』所収・1971・白水社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベッティ」の意味・わかりやすい解説

ベッティ
Betti, Ugo

[生]1892.2.4. カメリーノ
[没]1953.6.9. ローマ
イタリアの劇作家,詩人,小説家。法学専攻。第1次世界大戦に志願兵として参加,捕虜となり,収容所でガッダやテッキらの作家と知合う。初めメーテルランクの影響の強い,退廃的ロマン主義の詩を書いた。戦後,司法官となってパルマやローマに赴任。最初の戯曲『女主人』 La padrona (1927) で成功を収めた。司法官としての特異な立場から社会悪を告発し,ピランデッロ以後最大の劇作家といわれる。おもな作品に『裁判所の腐敗』 Corruzione a palazzo di giustizia (49) ,『牝山羊が島の犯罪』 Deitto all'isola delle capre (50) ,『女王と反逆者たち』 La regina e gli insorte (51) 。

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