ペトロニウス(読み)ぺとろにうす(英語表記)Gaius Petronius

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ペトロニウス」の意味・わかりやすい解説

ペトロニウス
Petronius Arbiter, Gaius

[生]?
[没]66
ローマの政治家,作家。本名 Titus Petronius Niger。コンスル執政官)やビチュニア総督としても有能だったが,それ以上に快楽の追求に特殊才能をもち,皇帝ネロ宮廷の「優雅の審判官」arbiter elegantiaeと呼ばれた。しかし皇帝の不興を買って,自殺を命じられ,最後の数時間を愉悦のうちに過ごして優雅に死んだという。その死の模様はヘンリク・シェンケーウィチの『クオ・バディス』に美しく描かれている。ペトロニウスの作とされる『サチュリコン』Satyriconは,散文韻文が交じったいわゆるメニッポス風サトゥラの形式で書かれた一種悪者小説で,西ヨーロッパで最初の小説といわれる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペトロニウス」の意味・わかりやすい解説

ペトロニウス
ぺとろにうす
Gaius Petronius
(?―66)

古代ローマの詩人タキトゥスによれば、ビティニアの総督を務めた有能な人物で、快楽主義者として聞こえ、皇帝ネロから「雅趣の判定者」arbiter elegantiaeとよばれたという。晩年、ネロの寵遇(ちょうぐう)を得て歓楽遊興のうちに過ごしたが、反逆罪の嫌疑を受けて自殺を命じられた。この話はシェンキェビッチの小説『クオ・バディス』で名高い。西洋最初の小説ともいわれる長編悪漢小説『サチュリコン』の作者とされるのがこのペトロニウスである。

[松本克己]

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