日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポポロ事件」の意味・わかりやすい解説
ポポロ事件
ぽぽろじけん
東京大学構内で起きた「大学の自治」にかかわる事件。1952年(昭和27)2月20日、東京大学の教室で学生劇団ポポロが松川事件に取材した演劇を上演した際、会場に私服警官3名が潜入しているのを学生が発見、「暴行」を加えて警察手帳を取り上げたとして、翌日警官隊が大学当局への連絡なしに構内に入り、学生を逮捕した。学生が取り上げた手帳から、警察が長期的・恒常的に学生・教職員等の活動や思想傾向に関する情報を収集していたことが明らかとなり、事件は、戦前の特別高等警察の復活に反対し、学問の自由を守る闘争へと発展した。国会では矢内原忠雄(やないはらただお)総長が大学自治擁護の論陣を張り、警察の行為の不当性を主張した。
他方、学生の「暴行」を訴えた裁判は21年に及び合計六つの判決を生んだ。この裁判は「学生の自治」の解釈をめぐって争われ、一審(1954)と二審(1956)では学生無罪の判決であったが、最高裁差戻し(1963)ののち、1965年東京地裁で有罪(懲役・執行猶予)となり、73年、最高裁上告棄却により学生の有罪が確定した。
[小田部雄次]
『遠山茂樹・渡辺洋三編『ポポロ事件――黒い手帳は語る』(1964・新興出版社)』▽『佐藤功著『ポポロ劇団事件――大学の自治と警察権』(田中二郎・佐藤功・野村二郎編『戦後政治裁判史録2』所収・1980・第一法規出版)』