学問の自由
がくもんのじゆう
真理の探究を目ざす学問の自由は、大学における研究の自由ないし教育の自由を意味するものとされてきた。そこでは研究対象の選定、企画、進行と成果の発表など研究の行為が、研究者の自主性に基づいてなされることが前提とされている。すでに認められてきた真理に対しての疑問、再検討を可能とし、政治的、経済的、宗教的などの点からの学問研究への制約や干渉を排除することを意味している。ヨーロッパで初めて憲法で学問の自由が明文化されたのは19世紀のフランクフルト憲法である。それまでの中世の教会や国王・領主などの権力の壁を破る真理探究の努力がルネサンス以降主張されるようになった。
日本では明治憲法では触れていなかったが、第二次世界大戦後の新憲法で「学問の自由は、これを保障する」(23条)と規定された。これは思想および良心の自由(19条)、信教の自由(20条)、表現の自由(21条)とともに規定された。学問の自由の保障は、学問研究の機関である大学に「大学の自由、大学の自治」を保障する論拠となる。さらに広く、だれでも真理の探究の行為をするときには学問の自由を認めるべきだという論もある。広く考えれば、大学という研究教育の施設だけでなく、大学以外の研究機関や私人の研究の自由も、学問の自由に含まれる。ただし、大学が学術の中心として高度の専門性をもっていることから、とくに大学における学問の自由が認められるのである。大学以外の教育の機関は研究機関ではないから、これらの学校では完全な意味での教育の自由は認められていない。
[手塚武彦]
『大内兵衛他著『大学の自治』(1963・朝日新聞社)』▽『島田雄次郎著『ヨーロッパの大学』(1964・至文堂)』▽『高柳信一著『学問の自由』(1984・岩波書店)』
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学問の自由
がくもんのじゆう
思想・良心の自由および表現の自由の一部分であり,(1) 学問研究の自由,(2) 研究成果の発表の自由,(3) 教授の自由の3つから成るが,広義の学問の自由には,制度的保障としての大学の自治も含まれる。明治憲法には学問の自由を保障する規定はなかったが,大学における学問の自由および大学の自治が条理および慣習として限定的に認められていた。日本国憲法は学問の自由を明示的に保障している (23条) 。大学の自治については,明文の規定はないが,当然保障されていると解されている。
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学問の自由【がくもんのじゆう】
真理探究のためにいかなることを研究し,発表し,教授しても,政治的・経済的・宗教的な諸権威による侵害を受けないこと。1849年プロイセンのフランクフルト憲法が初めて明文でこれを保障した。明治憲法にはこの規定はなかったが,日本国憲法は明文で保障している(23条)。歴史的には,大学の自治の保障と密接な関連をもって発展してきた。
→関連項目教育の自由|ポポロ事件
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がくもん【学問】 の 自由(じゆう)
宗教、政治などの権力によって
圧迫されないよう、学問研究、研究成果の発表、
討論、教授などを
解放、独立させ、その自由を確立すること。憲法に確立されたのは一八五〇年のプロイセン憲法からであるが、日本でも第二次世界大戦後、日本国憲法二三条に思想および良心の自由(一九条)、信教の自由(二〇条)、表現の自由(二一条)とともに確立された。
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がくもん‐の‐じゆう〔‐ジイウ〕【学問の自由】
学問研究・研究成果の発表・討論・教授・学習などに関して、政治・宗教・経済などいっさいの外的権力からの干渉・制限・圧迫を受けることなく、活動しうること。日本国憲法第23条に「学問の自由は、これを保障する」と規定されている。
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世界大百科事典内の学問の自由の言及
【教科書裁判】より
…
[法的な争点]
教科書訴訟は,教師に対する勤務評定や全国いっせい学力テストに関する教職員組合の闘争について発生した勤評裁判(〈勤評闘争〉)や学テ裁判に続き,[教育基本法]条をめぐる本格的な教育裁判となった。そればかりか,日本国憲法21条(検閲の禁止),23条(学問の自由),26条(教育を受ける権利),さらには31条(適正手続きの保障)等をめぐる憲法裁判として提訴以来国民から大きな注目を浴びた。 教科書訴訟においては,検定制度をめぐって,学校教育の教育内容に対する国家的介入の限界について徹底的に争われた。…
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