コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

経済人類学 けいざいじんるいがくeconomic anthropology

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

経済人類学
けいざいじんるいがく
economic anthropology

経済関係は社会関係の一部であるという見解に立ち,財物とサービスの生産および交換の諸関係にみられる人間関係を問題とする人類学の一分野。 B.マリノフスキーの『西太平洋の遠洋航海者』 (1922) における儀礼的交換=クラの分析と記述は,その古典とされる。しかし今日の経済人類学の基礎を築いたのは,経済史家 K.ポラーニーである。彼は著書『大転換』 (44) において,産業革命期のイギリス経済を分析し,人類史において近代市場経済が特殊なものであり,決して普遍的な経済制度ではないことを明らかにし,さらに最大利潤あるいは最小費用を可能とするような合理性を求める形式的な経済と,社会の再生産をさす実体的な経済とを区別した。それは,前者を追究する経済学に対して,後者のような共同体内の相互扶助宗教活動などと関連して現れる経済活動を対象とする経済人類学の方向性を示すものであった。以後,ポラーニーの影響下に実体論者 substantivistと呼ばれる学派が形成された。互酬性,再配分に基づく社会関係の研究を発展させた M.サーリンズや,アフリカの交易と市場に関する基本論文集をまとめ (P.ボハナンと共編) ,1978年から『経済人類学研究年報』を編集・刊行する G.ドールトンがその代表である。これに対して,H.シュナイダー,E.E.ルクレール,R.バーリングに代表される形式論者 formalistは,近代市場経済が採用されていない社会においても経済は合理的であるとし,経済学の適用可能性を主張している。ほかに,M.ゴドリエ,C.メイヤスー,M.タウシッグらによるマルクス主義的経済人類学もある。

出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について | 情報

デジタル大辞泉の解説

けいざい‐じんるいがく【経済人類学】

非市場社会の贈与交換・市場交換・再分配などの経済現象を研究する学問。

出典|小学館デジタル大辞泉について | 情報 凡例

世界大百科事典 第2版の解説

けいざいじんるいがく【経済人類学 economic anthropology】

経済人類学はその名が示すように,経済学と人類学の両方に深く関係している。ことに経済学との関係においては,それが深いというにとどまらず,経済学を肯定的に吸収するか否定的に批判するか,あるいは,どのような経済学(新古典派マルクス派か)に依拠するかにしたがって,経済人類学の問題関心,対象,方法にかなりの違いが生ずる。だが少なくとも未開社会ないしは非市場社会の経済生活の実地調査(フィールドワーク)やそれについての記録文献を直接の契機にしている点では,どの経済人類学も共通している。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

大辞林 第三版の解説

けいざいじんるいがく【経済人類学】

贈与・交換・再分配などの経済現象を研究する文化人類学の一分野。

出典|三省堂大辞林 第三版について | 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

経済人類学
けいざいじんるいがく
economic anthropology

人類学が対象とするきわめて多様な非市場社会の経済を、単に、近代経済学の理論不完全にしか適用できない周縁的な事例としてみるかわりに、おのおのの社会・文化的諸制度のなかに埋め込まれ、独自の統合を形成しているものとして分析する学問。人類学者による「未開社会」の経済の研究は古くからあったが、それが経済人類学という独自の分野を形づくるようになったのは、比較的最近のことである。この点で、非市場社会の経済には近代経済学の理論装置は無効である、と論じた経済史学者K・ポランニーの業績は重要な役割を演じた。
 経済人類学は、ポランニーの流れをくみ、彼の「互酬」「再分配」「交換」という統合形態論を核に、非経済的制度の作用の副産物としてもたらされる経済統合の類型学を志向する、G・ドルトンらに代表される「実体主義者」、非市場社会においても経済的活動は広義の合目的的活動として分析できるとする、H・シュナイダーら「形式主義者」、生産関係の分析を核として経済システムの動態的把握を重視すべきだとする、M・ゴドリエやメイヤスーらの「マルクス主義」の3陣営に分かれて活発な論争を続けてきた。[濱本 満]
『モーリス・ゴドリエ著、山内昶訳『人類学の地平と針路』(1976・紀伊國屋書店) ▽カール・ポランニー著、玉野井芳郎・平野健一郎編・訳『経済の文明史』(1975・日本経済新聞社) ▽カール・ポランニー著、玉野井芳郎・栗本慎一郎・中野忠訳『人間の経済』(1980・岩波書店) ▽栗本慎一郎著『経済人類学』(1979・東洋経済新報社)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について | 情報 凡例

世界大百科事典内の経済人類学の言及

【記号】より

…バルトの方法論の源泉となった,フランスで活躍するブルガリア生れの記号論学者クリステバJulia Kristeva(1941‐ )は,ロシア・フォルマリズムよりもM.M.バフチンの対話と交流の思想やフロイト主義の影響のもとにテキスト相互連関性などの概念を発展させ詩的言語理論を展開するが,彼女は父性原理としての法,言語を批判して母性原理としての無意識の解放を主張する。また文学以外では経済学の批判としての経済人類学が文化人類学の影響のもとに著しい展開を見せ,在来の生産中心主義の経済思想から一転して交換と消費の新しい思想を生み出した。フランスのボードリヤールJean Baudrillard(1929‐ )の記号としての消費の思想はその一つの頂点をなしている。…

※「経済人類学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

不義理

[名・形動]1 義理を欠くこと。また、そのさま。「多忙でつい不義理になる」2 人から借りた金や物を返さないでいること。「茶屋への―と無心の請求」〈逍遥・当世書生気質〉...

続きを読む

コトバンク for iPhone

経済人類学の関連情報