改訂新版 世界大百科事典 「マルトンヌ」の意味・わかりやすい解説
マルトンヌ
Emmanuel de Martonne
生没年:1873-1955
フランスの地理学者。エコール・ノルマル・シュペリウールで歴史,地理を学び,文学博士号,理学博士号を得た。レンヌ(1899),リヨン(1905)各大学教授を経て1909年パリ大学文学部教授となり,35年間自然地理学を担当。P.ビダル・ド・ラ・ブラーシュの高弟で女婿。人文地理学のA.ドマンジョンと並んでフランス地理学の発展に大きな功績を残す。彼は偉大な組織者であり,優れた研究者でもあった。組織の面では,従来諸学科に分属研究されていた地理学の諸分野をまとめて再組織し,パリに地理学研究所を開設(1923),地理学を名実ともに統一独立させたこと,年1回催される大学連合エクスカーションの組織に成功したこと(1906),《地理学年報》の編集指導により同誌を発展させたこと,などがある。研究面では,まず,たえず新しい方法・手段を取り入れ新分野を開拓し続けた成果を集大成した《自然地理学概論》(1909)がある。これは,独自の区分法による気候,W.M.デービスを受け継ぎ発展させた地形,植物地理,などの分野を一貫性のある自然地理学としてまとめた,一般地理学の大著である。他方,地誌的研究には,《世界地誌》双書の《中部ヨーロッパ》2巻(1930,31)と《フランス--自然地理》(1942)とがとくに有名。気候と地形の関係,空中写真の利用など先駆的な着想が注目される。
執筆者:松田 信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報