日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミーマーンサー学派」の意味・わかりやすい解説
ミーマーンサー学派
みーまーんさーがくは
Mīmāsā
インド六派哲学の一つ。ベーダーンタ学派と姉妹関係にある。ベーダ聖典の権威とそれに規定されるダルマ(宗教的義務)すなわち祭祀(さいし)の実行を重視するという意味でもっとも正統的な学派。祭祀実行上の細部に関する諸説間の矛盾を、除去統一するための論議考究は古くから行われ、ミーマーンサー(考究)とよばれたが、その伝統のなかから祭祀実行の意義一般を中心に哲学的・解釈学的論議が積み重ねられ、体系化され、学派として成立したものである。開祖とされるジャイミニは、学派の根本経典である『ミーマーンサー・スートラ』の作者ともされる。この書に対して、シャバラスバーミン(550ころ)が『ミーマーンサー・スートラ注解』を著した。さらにそれに対して、クマーリラ(650―700ころ)とプラバーカラ(700ころ)がそれぞれ復注を書いて、バーッタ派、グル派の祖となった。
ミーマーンサー学派では、ことばは永遠であると考え、ことばからなるベーダ聖典も作者をもたぬ永遠の存在であると主張する。その過程で絶対神の存在を否定、神々は祭祀を完璧(かんぺき)に遂行するための道具立ての一つにすぎぬとした。また、祭祀の果報は、祭祀実行直後に祭主に新たに生ずる余力を介して将来かならず実現されると考え、その果報の享受者としてのアートマン(我)の存在を主張した。解脱(げだつ)のための実践としては、知行併合論(ちぎょうへいごうろん)的立場をとる。また、この学派で確立した聖典解釈上の諸原則は法典解釈の場などでも援用され、普遍的な価値を認められている。
[倉田治夫]