デジタル大辞泉
「む」の意味・読み・例文・類語
む[助動]
[助動][(ま)|○|む(ん)|む(ん)|め|○]活用語の未然形に付く。
1 推量・予想の意を表す。…だろう。
「御岳精進にやあらむ、ただ翁びたる声に額づくぞ聞こゆる」〈源・夕顔〉
2 意志・希望の意を表す。…う(よう)。…するつもりだ。
「われこそ死なめとて泣きののしること、いと堪へがたげなり」〈竹取〉
3 適当・当然の意を表す。…するのがよい。…するのが当然だ。
「鳴り高し。鳴りやまむ」〈源・少女〉
「さやうのもの、無くてありなん」〈徒然・一三九〉
4 (主として「こそ…め」「なむや」の形で)勧誘・要求の意を表す。…してはどうか。…しないか。
「忍びては参り給ひなむや」〈源・桐壺〉
5 (主として連体形の用法で)婉曲に表現する意を表す。…のような。
「身を治め国を保たん道もまたしかなり」〈徒然・一一〇〉
6 (主として連体形の用法で)条件や仮定の意を表す。…ならば。…したら。
「斎院より御文のさぶらはむには、いかでか急ぎあげ侍らざらむ」〈枕・八七〉
[補説]「む」は上代から近世まで広く用いられたが、平安時代以後「ん」とも書き、鎌倉時代以後は「う」にも変化した。なお、未然形「ま」は上代、「まく」の形だけに用いられた。→めや[連語]
む[感]
[感]
1 力んだり、感心したり、また驚いたりしたときに口を結んで発する声。うん。むう。「む、すごい」「む、やるな」
2 了解・同意を示す応答の声。うん。ふむ。
「―といらへて立ちぬ」〈宇治拾遺・五〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
Sponserd by 
む
- 〘 助動詞 〙 ( 活用は「ま・◯・む・む・め・◯」。四段型活用。平安時代中期には mu の発音が m となり、さらに n に変わったので、「ん」とも書かれる。また m は ũ から u に転じて鎌倉時代には「う」を生み、やがて u の発音は前の語の末の母音と同化して長音化するようになった。活用語の未然形に付く。→う ) 推量の助動詞。現実に存在しない事態に対する不確実な予測を表わす。
- ① 話し手自身の意志や希望を表わす。…しよう。…するつもりだ。…したい。
- [初出の実例]「繊細(ひはぼそ) 撓(たわ)や腕(がひな)を 枕(ま)か牟(ム)とは 吾(あれ)はすれど」(出典:古事記(712)中・歌謡)
- 「みやこいでて君にあはんとこしものをこしかひもなく別れぬるかな」(出典:土左日記(935頃)承平四年一二月二六日)
- ② 相手や他人の行為を勧誘し、期待する意を表わす。遠まわしの命令の意ともなる。…してくれ。…してもらいたい。
- [初出の実例]「い及けい及け 吾(あ)が愛(は)し妻に い及き逢は牟(ム)かも」(出典:古事記(712)下・歌謡)
- 「などかくはいそぎ給ふ。花を見てこそ帰り給はめ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)春日詣)
- ③ 推量の意を表わす。
- (イ) 目前にないこと、まだ実現していないことについて想像し、予想する意を表わす。…だろう。
- [初出の実例]「山処(やまと)の 一本薄(ひともとすすき) 項傾(うなかぶ)し 汝が泣かさ麻(マ)く 朝雨の 霧に立た牟(ム)ぞ」(出典:古事記(712)上・歌謡)
- 「端にこそたつべけれ。おくのうしろめたからんよ」(出典:枕草子(10C終)三六)
- (ロ) 原因や事情などを推測する場合に用いる。…だろう。…なのであろう。
- [初出の実例]「かくの如 名に負は牟(ム)と そらみつ 大和の国を 蜻蛉(あきづ)島とふ」(出典:古事記(712)下・歌謡)
- 「をとここと心ありてかかるにやあらむと思ひうたがひて」(出典:伊勢物語(10C前)二三)
- (ハ) ( 連体法に立って ) 断定を婉曲にし、仮定であること、直接経験でないことを表わす。…であるような。…といわれる。…らしい。
- [初出の実例]「命(いのち)の 全(また)け牟(ム)人は 畳薦(たたみこも) 平群(へぐり)の山の 熊白檮(くまかし)が葉を 髻華(うず)にさせ その子」(出典:古事記(712)中・歌謡)
- 「大事を思ひ立たん人は、去りがたく心にかからん事の本意を遂げずして」(出典:徒然草(1331頃)五九)
むの語誌
( 1 )原形をアムとする説がある。
( 2 )未然形「ま」は、上代のいわゆるク語法の「まく」の形に現われるものだけである。
( 3 )形容詞型活用や助動詞「ず」には、「あり」を介して付くのが常であるが、上代では、形容詞型活用にはその古い未然形語尾「け」に付く。「大魚(おふを)よし 鮪(しび)突く海人(あま)よ 其(し)が離(あ)れば うら恋(こほ)しけ牟(ム) 鮪突く海人」〔古事記‐下・歌謡〕、「逢はずして行かば乎思家(をしけ)牟(ム)まくらがの許賀(こが)漕ぐ舟に君も逢はぬかも」〔万葉‐三五五八〕など。
( 4 )助動詞「けむ」は、もと過去の助動詞「き」の未然形にこの「む」が結合したという説がある。そのほか、「らむ」「まし」なども、この「む」に関係あるといわれる。
( 5 )「む」は接続助詞「ば」が下接しないこと、「き」「つ」などの「過去・完了の助動詞」が下接しないことなど、「けむ」「らむ」と共通している。
( 6 )断定の助動詞「なり」(「にあり」を含む)に下接するときに「原因推量」を表わすように思われることがあるが、これは「なり」の働きによって成立する用法で、「む」そのものが単独で「原因推量」を表わしているのではない。( 7 )「む」は中古以降、徐々に「う」へと変化していき、室町時代には「う」が一般化する。
む
- 〘 感動詞 〙
- ① 相手のことばを承諾したことを表わす語。また、単なる応答のことばとしても用いる。
- [初出の実例]「ひげなる声にて、むといらへてたちぬ」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)五)
- ② 物事に感心したり驚いたりしたとき、または、ことばにつまったときなどに発する語。
- ③ 力を入れるとき、口を結んで発する声。
む【む・ム】
- 〘 名詞 〙 五十音図の第七行第三段(マ行ウ段)に置かれ、五十音順で第三十三位のかな。いろは順では第二十三位で、「ら」のあと、「う」の前に位置する。現代標準語の発音では、両唇の間を閉鎖した有声通鼻音 m と母音 u との結合した音節 mu にあたる。歴史的かなづかいでは、m またはその他のはねる音で読まれることがある。「む」の字形は、「武」の草体から出たもの、「ム」は「牟」の初二画をとったものである。ローマ字では、mu をあてる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
Sponserd by 
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
Sponserd by 